特定技能制度における工業製品製造業分野の新たな業務区分の一つに縫製が追加された。これまで技能実習制度を活用し、技能実習生が物作りの一端を支えていた国内縫製業や関係者からは歓喜の声が上がる。
(森田雄也)
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岐阜市で縫製工場のアイエスジェイエンタープライズを営み、技能実習生の受け入れ窓口となる監理団体、MSI協同組合の代表理事も務める井川貴裕さんは「この時を切望していた」と喜びの声を上げる。生産の海外移転で衣料品自給率が低下し、国内の物作りの存続が危ぶまれるなか、井川さんは繊維職種追加を求めて、かねてから署名活動を行ってきた。制度が実施されると、「もちろん活用し、外国人材を入れていきたい」とする。
岐阜県関市で縫製業のオールウィンを運営し、岐阜県既製服縫製工業組合の理事長の野呂誠さんも、今回の決定を「良かった」と話す。国内とフィリピンのセブ州マクタン島に自社工場を持つ同社は、現地の工員を技能実習生として日本に招いてきた。帰国後も現地で働いている縫製工員が今も複数いる。特定技能追加でそういった人材を「再度日本に呼べる」という。
一方で懸念もある。一つは制度の正しい活用だ。MSI協同組合の井川さんは、「制度を正しく理解・活用し、共生社会への実現に向けて動いていく必要がある」と強調する。かつて制度を不正利用する縫製業者が後を絶たなかったことを踏まえての発言だ。
運用の全容が周知できていないことへの不安も募る。岐阜市の縫製業、サンワークの浅野勝三社長は「今回の決定は業界にとって良かった」としながらも、「試験が増えるなど、企業のコストや労力といった負担が増える可能性がある」と指摘。さらに、「円安もあり、外国人材がそもそも集まりにくくなっている」ことも危惧する。