「包括性」をテーマにNYで2つの展覧会(杉本佳子)

2017/12/30 20:40 更新


 ニューヨークで感じられる昨今のキーワードの1つに、「inclusive」(包括的な)が挙げられる。「誰でも社会の中に居場所がある」というマインドセットが、ビジネスにおいても非常に重要になっている。

 その包括性をテーマにした展覧会が、現在ニューヨークで2つ行われている。同じようなコンセプトの展覧会が同時に開催されていることは、このキーワードの重要性を象徴しているといえるだろう。

 1つは、15日からクーパーヒューイット・スミソニアン・デザイン美術館で始まり、来年9月3日まで開催される「アクセス+アビリティー」展だ。70点以上の「inclusiveなデザイン」を展示している。

 すでに商品化されているものから、プロトタイプまでさまざま。椅子から立ち上がることが難しい人をサポートするボディスーツは、まだプロトタイプだ。

 ドイツのハンブルグにある劇場のみで試験的に使われているシャツは、ステージに設置されたセンサーとつながっていて、耳が聴こえない人でも音楽を感じることができるという。チケットを買う時に予約をして、劇場で着用する。

 杖は、持ち手や先端部分のデザインがそれぞれどういう利点があるのかの説明も表示されている。

 目の見えない人をナビゲーションするためのネックレスやブレスレットは、アイフォーンのアプリなどを通じて音声操作できる仕組みだ。

 ビジューをつけてお洒落なイヤリングに仕上げた補聴器。

 義足をカバーするレッグカバーも、さまざまなデザインがある。

 身体的障害により靴の紐を結ぶことができない10代の男の子が、ナイキに自分でもはけるスニーカーをつくってほしいと手紙を書き、それを元につくられたスニーカー。かかと部分をジッパーでぐるりと閉めて、ストラップを回して留めると、普通のスニーカーとなんら変わらない。

 クーパーヒューイットのキュレーターのキャラ・マッカーティーさんは、1990年に「障害をもつアメリカ人法」が制定され、2008年にそれがより広範囲に適用されることになったことが重要な意味をもつと指摘する。

 クーパーヒューイットでも、それを機に車椅子用の通路が取り付けられたそうだ。マッカーティーさんは、高齢化が進み、消費者の要求がより強まっていること、デザイン活動家(デザインを通じて政治的主張を表現するデザイナー)が増えていること、テクノロジーが発展して以前はできなかったことができつつあることが、包括性が広がっている背景にあると分析する。

 一方、ファッション工科大学の美術館で今月5日に始まり、来年5月5日まで開催されるのは、「ザ・ボディ:ファッション&フィジック」展だ。「美の多様化」も時代の流れで、ステレオタイプ的な美しさにとらわれていると、ビジネスがうまくいかない時代になっている。

 インスタグラムでのフォロワー数が580万人に及ぶ大人気モデルのアシュリー・グラハムのような、「太っているけどきれい」「太っていてもかっこいい」女性の人気が高まり、「自分のあるがままの顔やからだに自信をもとう」という風潮になってきている。

 ザ・ボディ:ファッション&フィジック展の入り口では、そうした風潮を証言する動画が流され、ファッションにおける「理想的な」体型が時代と共にどう変わってきたのかを検証している。

 来年2月23日にこの展覧会に関連して行われるコンファレンスでは、大きいサイズ、ユニバーサルデザイン、障害者のためのライフスタイルブランド、高齢の女性のためのファッションなどにたずさわっている人たちが講演者として参加する。


89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ



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