【解説】ストライプインター石川社長辞任 従業員を守れる会社を

2020/03/09 06:30 更新


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オーナー社長ならではのスピード感で、次々に新事業に挑戦した石川康晴氏

 ストライプインターナショナルの社長を3月6日に辞任した石川康晴氏は、94年に地元・岡山で創業。トップダウンの即断力で会社を急成長させた。主力ブランド「アースミュージック&エコロジー」などに加え、新規事業開発やM&A(企業の合併・買収)も推進。近年はホテルなどの異業種やデジタル分野への投資を強めていた。

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 岡山を代表する企業のトップとして地元の文化芸術振興にも力を注ぎ、講演会でも精力的に活動。地方自治体とのコネクションも強く、〝理想の企業家人生〟を歩んでいるように見えた。また、同社は女性が働きやすい職場であるとアピールし、就職先として学生の人気も高かった。旧クロスカンパニー時代には「ブラック企業」との批判があり、企業イメージを再構築してきただけに、今回の一件は、再び水を差す結果となった。報道のタイミングはくしくも、アースの新テレビCM放映とも重なった。女性客の反感や人材採用など企業活動への影響は避けられない。石川氏は目標だった上場を果たす前に、代表取締役社長の地位を手放すことになった。

99年には岡山に「アースミュージック&エコロジー」1号店をオープン、その後主力ブランドに成長した

 石川氏が会社を離れたため、セクハラ問題の真相は分からない。ただ、複数の関係者からは、以前から問題視されていたという話も聞く。当時の取締役が提起し社外取締役などが出席した18年の臨時査問会、そして先日の公式コメントも、踏み込んだ内容ではなかった。上場を意識して社内体制を整備していた同社だが、絶対権力者である経営トップに対するガバナンスは難しかったのだろうか。

 立花隆央新社長は、買収したキャンの事業を拡大し、経営者としての実績もある。カリスマ・ワンマン的経営スタイルを脱して、組織で闘える企業体にすることが期待される。新しいビジネスに次から次へと挑戦し、大きな夢を語る石川氏の経営は、周囲の人を引き付けるパワーがあった。それによる成功事例の一方、多分野に先行投資し〝風呂敷〟を広げていく危うさも見えた。リスク管理のために撤退基準は明確化していると以前語っていたが、国内情勢が非常に不安定な今、新経営陣にはより堅実な運営も求められる。

 多くの専門店が新規出店を控えるなかで、年間100店超の積極出店を続けてきた同社は、空きテナントに悩むディベロッパー側から頼みにされる存在でもあった。今後、同社が消費者からの信用を回復していくための努力は、取引先にとっても大きな関心事だ。そして機を逃さずコーポレートガバナンスやコンプライアンス(法令順守)の抜本的改革を行うことができるかに、同社の将来はかかっている。何度となく延期されてきた株式上場準備も、それを抜きには語れない。

「アースミュージック&エコロジー」をはじめ女性を対象にしたブランドが多い (上海の店舗)

 ブランドへの風評が長引けば、苦しむのは現場に立つ店舗スタッフたちだ。これまでの取材を通じて、同社のさまざまな社員に出会った。店舗スタッフは純粋で礼儀正しく、仕事に真摯(しんし)な人が多い。だからこそ、今回の問題は胸が痛む。従業員が安心して働ける環境を早期に取り戻すことは、若者たちの人生を預かる会社としての、最も重要な責務でもあると思う。

 ファッション業界は女性が多く、社内での上下関係を利用した様々なハラスメントがまかり通っていた時代もあった。しかし今は、それが看過される時代ではない。競合他社も今回の件を他山の石とし、従業員を守れる会社とは何か、今一度考えるべきだ。

(石井久美子)


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