【店長に役立つページ】ローカル有力専門店の店作り 裁量大きく、多様なスタイルで
ローカルに地盤を持ち複数店舗を運営するレディス、メンズ店にフォーカスを当て、店長さんの接客手法やスタッフ教育を取材した。店舗運営の自由度と、それを生かすための創意工夫が光る。
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【北関東】「コーナーズアーク」店長 狐塚洸さん
宇都宮のグループ店を移動接客

北関東を中心にメンズ主力のセレクトショップ「アーク」をドミナント化してきたリストリクト。5年前から埼玉県の大型商業施設への出店も開始し、現在、実店舗は17。拠点となる栃木県宇都宮市の中心街にはジャンル別にアークの路面店が立ち並ぶ。
その中の一つ「コーナーズアーク」は大人が楽しめるエッジの利いた国内ブランドから定番品まで集めるメンズショップ。狐塚さんは入社8年目、3年前に店長に就任した。もともと同店のファンとして通い続け、アルバイトを経て社員となった。「会社からは、あいさつ、思いやりなど人間の基本的な部分の大切さを学んだ」という。店頭スタッフにも大きな声でのあいさつを徹底する。
同社では各店仕入れで店長がバイイングを担当する。だが、何を仕入れるかは店頭スタッフと相談して決める。トップダウンではなく、現場で何と何を合わせて販売するかまで話し合い、納得した品揃えで臨むので、モチベーションも高い。こうした経験は次に店長になった時に生かされる。「自由度が高い分、責任感も生まれる。適度のプレッシャーが良い仕事につながる」と話す。店長だけでなく、現場に任せる裁量も大きいのでスタッフも生き生きとしている。
ローカル立地の特徴としてグループ店を顧客と回遊する移動接客がある。「自店だけで完結せず、顧客が欲しいものを一緒に探す」姿勢を全社員が貫く。それによって、スタッフが顧客を抱え込んだり、足の引っ張り合いをしたりすることもなく、チームワークも良好だ。スタイリング提案ではブランドイメージに縛られず、TPOに合わせ複数のコーディネートを薦める。一つひとつの服の可能性を引き出し、顧客に喜んでもらうことを最優先する。
【東海】「ガトーロマンティーク」イオンモール津南店店長 藤田美江さん
価格を見せないことで顧客作り

来月で開店1年となるが、津市内に加え、伊勢、志摩など広範囲の顧客を獲得している。「お客様がお友達を紹介してくださっている」のが店の強みだ。
大規模なモールとあって様々な業種、業態の専門店が店の特色を打ち出す中、藤田さんがこだわっているのは、POP(店頭広告)や値札を含め、「プライスを見せないこと」だ。黒を基調にしたクラシックな外観、オフの場で着るカジュアルウェアからパーティードレスまで高級感のある品揃え。高いものしか扱っていなさそうで、ふらりとは入りづらい雰囲気だ。それでも、敷居の高さを感じながらも興味を持って店に入り、気に入った商品を手にとり値札を見たとき、想像していた価格よりも安いことに驚く。その体験は感動につながり、多くの場合、「顧客になっていただける」。口コミで広めてくれるのも、自分の体験を友人にも味わってもらい、共感してもらいたいからだ。通路から商品の値段が分かってしまっては、こうした驚きは味わえない。
服飾専門学校でデザインを学んでいたが、「自分は作るより売るほうが向いている」と、専門店の販売スタッフに転じた。大津店で店長になり、イオンモール津南の開店に合わせ、転勤した。
スタッフ教育は自主性を尊重している。基礎的なことは指導しても、ある程度からは実践中心。コーディネートの好みや会話の盛り上げ方など「スタッフ一人ひとり違う」から、やり方を押し付けるのではなく、自分のやり方で試してみて、良いところを伸ばしていく。工夫した方がいいと思った時は「こうした方がいいよ」とアドバイスし、成功例はみんなで共有する。休憩時間にはみんな、自分で試着して、着こなしを磨いている。
(繊研新聞19年10月28日付)