スポーツ・アウトドアショップに学ぶ店づくりの極意

2019/11/04 06:28 更新


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【店長に役立つページ】《スポーツ・アウトドアショップに学ぶ店づくりの極意》専門商品でも基本は同じ!

 健康・自然志向の強まりで、スポーツ・アウトドア用品への注目度が高まっている。専門性が高いため、それらを売るには特別なノウハウが必要で、自店で扱うことに抵抗を覚える向きもあるが、意外にも、ファッション販売と共通することが多い。主要なスポーツ・アウトドアブランドの優秀店長らに、独自の売り方や店づくりの極意を聞いた。

「ザ・ノース・フェイスプラス」アミュプラザ長崎店副店長 吉田ひろみさん

会話楽しみ、何が一番か考える

「お客様と一緒に考え、選ぶ時間が楽しい。一緒に登山した気分になれる」と話す

 18年には社内ロールプレイングコンテストで西日本エリア予選を勝ち抜き、本選では敢闘賞を受賞。チーム全体での協力体制では、お客にもメリットがある施設のハウスカード新規獲得数で2年連続1位となるなど、「お客様にとって何が一番か」を常に考え、会社やディベロッパーからの信頼も厚い。

 6年前の29歳で保育士から転職、畑違いのようだが「幼少期から山登りなどを体験させてもらい、自由奔放に育てられた」と、アウトドアが趣味で同店の顧客だった。人と話すことも好き。持ち前の明るさとフィールドで体験した情報を生かした接客は、顧客から信頼されリピート客も多い。

 アプローチは「まずはお客様との会話を楽しむ。売り上げはあまり考えない」と笑う。天気や休日の過ごし方、頑張っていることなど最低10個質問するなかで、プライベートを垣間見て商品提案へ深掘りしていく。頭から足元までの観察も忘れない。色やテイストなどの好みを把握し、お客目線と薦めたい二つのパターンを提案。ニーズは大事にしながらも、「一緒にクローゼットの中身を考えながら、違ったスタイルを提案する」。

 街着として買い求める人も多いが、機能性がブランドの売りなので、音楽に興味があれば「フェスの時は雨や汗対策に速乾性がありますよ」、車好きなら「運転時の脇が擦れないシルエット」、家でも洗濯できるなど、商品特徴を交えて提案する。

 登山に興味がない人にもロゴの由来やブランドの背景は必ず話す。ブランドの本質を理解してもらうことが、「お客様との長い付き合いにつながる」と考えている。

「ルコックスポルティフ/マンシングウェアアウトレット」入間店店長 小宮山友美さん

朝礼で接客優先に軌道修正

品揃えの約7割がゴルフアパレルだが、「専門知識より会話力を磨いてお客様に可愛がられるほうが大事」と話す

 アウトレット店ながら、店として接客と顧客作りに力を入れており、販売員一人当たりの顧客獲得数は他店の約3倍、店舗の顧客比率は5割を誇る。

 店舗運営で重視するのは、毎日の朝礼で、各メンバーにその日の目標を発表してもらうこと。難易度は問わないが、「カード獲得3件」「ポロシャツ10枚売る」「声掛け10人」「セット率1.8」など、必ず数字を入れるよう求めている。小宮山さんは、「人により能力に差があるのは当然だが、各自が目標を決めれば、目的を持って接客に臨める」と、その意義を明かす。

 朝礼をきちんと開催するようになったのは、2年前から。入間店は6年前に、もともと2店に分かれていた「マンシングウェア」と「ルコックスポルティフ」が合体してできた店舗。話題性からしばらく販売好調が続いたが、「顧客づくりをなあなあにしたことで、改装後3、4年目に不振に陥った」。

 そこで小宮山さんが取り組んだのが、各販売員の仕事のやり方を接客優先に変えてもらうことだった。「お客様が目の前にいても、納品があればすぐにストック整理をするなど、販売員ごとに思い込みによる仕事の癖があった」ためで、その軌道修正の場として朝礼を活用した。昨年秋にはレジ横に、顧客カードの登録カウンターを設置。これまで売り場内で立ちながらやっていた作業を、専用コーナーで座ってできるようにした。

 こうした施策で、販売員の意識や働き方は様変わり。店売り上げも、今春夏から前年比10%増と復調している。

 現在同店は、デサントが運営するアウトレット業態で売り上げ2位。1位は立地で優位性があり、売り場も広い軽井沢にある店だが、「いつか1番に」との目標を持ち、店長業に励む。

「ミズノウエルネスショップ」八重洲店長 西田ももこさん

足型測定+VMDを徹底

足型計測をきっかけにセット販売につなげる西田さん。「売りたいとどうしても商品を店頭に多く出しがちだが、これは逆効果」とも

 「ミズノウエルネスショップ」は、ウォーキングシューズや機能ウェアを揃えて健康的なライフスタイルを提案する小売業態。20年以上の歴史がある八重洲店は、ミズノが展開する直営店の中で2番目に売り上げ規模が大きい店だが、近年は不調が目立っていた。そんな店舗に昨年9月に着任し、増収店に生まれ変わらせたのが西田さんだ。

 西田さんがまず取り組んだのが、「ちょっと頑張れば達成しそうな目標を設定」し、スタッフのモチベーションを引き上げることだった。ミズノウエルネスショップは全店に足型・足圧測定器があり、利用者には、データに基づき接客できるのが強み。そのため、靴購入希望者にはできるだけ測定器の利用を薦めるよう徹底した。

 「普段履かれている靴はかなり大きめで疲れやすいのでは」「浮き指ぎみで、指先を使って蹴り出す動作がきちんとできていないかも」――。そんなふうに足の傾向を示しながら〝問診〟をし、利用者の共感を得ていく。専門的な話になるため、「接客時間が長くなりやすい」ので、靴だけでなく、インソールとのセット購買につなげやすいのも利点だ。

 次に着手したのは、VMD改革。「それまでの展開手法は単なるアイテム別で分かりにくく、さらに陳列量も多かったので、店として何を売りたいか不明確」だった。そこでVMDインストラクターの資格を持つ西田さんは、性別とシーン別に商品を区分するとともに、陳列量を半分以上削減。それまで店頭に1型当たり全色・全サイズを出していたところを1サイズのみとし、売り場をすっきり・きれいに見せるようにした。

 その結果、今4月以降、売り上げが浮上。8月まで前年同期比10%の増収となった。

「ルルレモン・アスレティカJP」日本リージョナル・マネジャー ケイト・ドゥ・アヨラさん

共に人生歩み、良いリーダーに

スタッフには、よりパワフルに、よりヘルシーにと期待する(右)

 外資系のルルレモンでは各店でヨガやワークアウトの「コミュニティークラス」を設け、地域に密着してスタッフやアンバサダーが顧客とのつながりの輪を作っている。コミュニティークラスは仲間同士でのおしゃべりも含めて「当社の掲げる〝スウェットライフ〟つまり『仲間と一緒に汗を流すことで、コミュニティーを広げ、世界をより良いものにする』の実現を目指している」とケイトさんは話す。ケイトさんは日本のリージョナルマネジャーとして店長らを束ねる。ケイトさん自身、ニューヨークのソーホー店のストアマネジャーから豪州のリージョナルマネジャーを経て、日本に赴任した。

 コミュニティークラスで特徴的なのが、アンバサダーの存在。アンバサダーは社員ではなく、シェフやカメラマンなど本業を持つ人が友情関係でつながっている。日本では現在アンバサダーが37人いる。こうした人たちとスタッフ、顧客が「個人的な関係を築き、ブランド価値や製品を伝え、人生の旅を一緒に歩むこと」を重視している。街中に看板を出して客を呼び込むのではなく、より本質的な、自然な結び付きを大切にしている。

 スタッフへの教育には包括的なトレーニングがある。素材や商品、フィット感のほか、倫理的姿勢や企業の哲学ついても学ぶ。ケイトさんは「仕事と共に個人の成長を重視して、人生の旅を共に歩み、世界にとっても良いリーダーとなることが大切」と強調する。そのために、社内には「ラーニング・ディベロップメント・チーム」という部署があり、個人の成長に焦点を合わせ、人生のリーダーとなれるように手助けしている。

《バックルーム》

 スポーツ・アウトドア用品は専門性が高いため、販売でも独自のスキルが求められると予測したが、意外にもファッション商品と同じことを実践しており驚いた。ある店長は「ゴルフの知識は必要ない。むしろ、お客様と楽しい会話を盛り上げる『会話力』が大事」と言い切る。もちろん足の測り方、計測結果の読み解き方、機能素材への理解など専門品ならでは知識は必要だが、それは実務の中で習得できるもの。分からなければ「お客様に教えてもらうくらいの心構えで良い」とも。お客様と信頼関係を築く、相手を知り顧客分類と再アプローチに生かす――。専門商品であっても、販売に必要な技術は同じだ。

(繊研新聞19年9月30日付)


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