エールフランス、16年ぶりの大規模ストライキ(野村真司)

2014/10/08 00:00 更新




2014年9月28日、パリの一大イベント「ファッション・ウイーク」と重なったエールフランスの大規模ストライキが終了した。もはや、旧聞に属する話かもしれないが、大変な思いをされた業界の方も少なくなかったのでは?

開始日はプルミエール・ヴィジョン(世界最大級の生地展)開催を翌日に控えた、9月15日。それは、突如はじまったものとは思えない、巧妙かつ長期間に及ぶものだった。

16年前にも、このような大規模なストライキが起こったのを知っているだろうか。1998年夏、1ヶ月にも及ぶストライキは、フランスワールドカップの日程に合わせられた。

エールフランスは、管制塔、乗務員、組合などの比較的軽めのストライキは度々起こるが、ここまでのものは「今世紀初」と報じられた。

■ストライキの首謀者達

空の旅で最も重要な人物である「パイロット」が、今回のストライキの首謀者達である。1998年のストライキも彼らが起こしたものであり、国内線、国際線、近距離、長距離含め、ほぼ全ての航空手段が運行不能となった。いったい彼らに何があったのだろう。 

 


 

 ■トランザビア航空

聞き覚えのない名前かもしれないが、エールフランスの近距離用航空会社であり、子会社として経営している。パイロット達はその子会社へ大規模に出向されるというのだ。そして、経営本体をエールフランスから、諸外国管轄へ移すという計画がまことしやかに囁かれている。

昨年話題となった、ドラマ「半沢直樹」。そこで描かれた片道切符の出向が、ここフランスでも日常茶飯事レベルで行われているのだ。

エールフランスのパイロットは、世界屈指の操縦技術を持ち、それに見合うお給料を得ているが、子会社への移動はエリート意識の強い彼らにとって耐えられなかったのかもしれない。

そして、自国フランスではなく他国の管轄になることも許しがたかったのかもしれない。更に彼らが積み上げてきた年金も、同じユーロ内であっても大きな違いが出てくるというのだから、何とも耐え難いのであろう。

■1週間で60億円

2週間にも及ぶ大規模なストライキは、エールフランスに甚大な被害を与えた。1週間で60億円にも及ぶ損害だと伝えられている。

原則的にキャンセルとなった飛行機のチケットは、払い戻しか、別の航空会社のチケットに変更されるが、当然エールフランスが支払うことになる。他にも様々な支払いが発生するため、1週間60億円以上、2週間で120億円を大きく越えているに違いない。

■ストライキへの対策

近年の個人旅行ブームや、インターネットサービスの拡大により、旅行会社でチケットを手配する人たちが少なくなっている。旅行会社経由でチケットを手配したり、ツアーなどで旅行したりする人たちは、その旅行会社へ問い合わせし、彼らがチケットの振替や手配を進めてくれるので安心だろう。

 


 

では、個人の場合どうしたらよいか。まず、電話での問い合わせは基本的に避けるべきである。ストライキの影響で、電話はパンク寸前で、担当者も対応しきれず、時間も掛かる。空港まで駆けつけるか、航空会社のオフィスへ直接行ってしまう方が得策と言える。

そして、振替えで割り当てられる便はなるべく別の航空会社を希望すること。今回、振替便さえもキャンセルという事態が頻繁に発生していたからだ。

■強硬手段

仕事ベースで出張の方や、空港まで赴く時間がない方、語学に自信がない方はどうしたらよいのだろう。ひとつの事例を紹介しよう。

ファッションウィークということもあり、ミラノからパリへの移動が必須となった今回。ミラノでは、コレクションの過密なスケジュールをこなしているため、電話も含め、なかなか対処の時間が得られないのが現状であった。

チケットの払い戻しなどの各種手続きはパリコレ終了後、帰国後と割り切り、とにかくミラノ・パリ間のフライトを確保することが優先事項となった。

別航空会社や格安航空会社のサイトを閲覧し、日程を確定させるのだが、驚くのは価格。普段であれば、200ユーロ以下の航空券でさえ、足元をみているとしか思えないほど高騰しており、600ユーロや1000ユーロなんて金額に跳ね上がっていた。

おすすめは、Ryanair(ライアンエアー)社やEasyjet(イージージェット)社の格安航空会社で、比較的安価でチケットを購入できる。ネット経由で手続きできるため、備えあれば憂いなしと思って、手帳の片隅に各国の格安航空会社の名前を控えておこう。今回はRyanair社にて150ユーロ以下で手配がすることができた。

■それでもエールフランス

今回のストライキで様々な人が被害をこうむり、多大な迷惑が掛かったに違いない。仕事もキャンセルになったであろう。大事に駆けつけられなかっただろう。余計な出費もしたであろう。もうエールフランスはこりごりな人も多いだろう。絶対に乗らないと心に誓った人もいるだろう。

けれど、それでもエールフランスが演出するフランスの香り、パリの香りは、他では味わえないのではないだろうか。

機内アナウンスの美しいフランス語、少し背筋が伸びるような乗務員の対応、近寄りがたく遠すぎない絶妙なバランス感覚、そしてその歴史と歩み。

少し前に、パリのグランパレでエールフランス展なるエクスポジションが開かれていたが、彼らが放つブランド力は想像を越えるものであり、古き良きフランスの伝統が脈々と受け継がれているように思えた。

 


 

■NOは行動に起こしてみたい

先進国で、被害や誹謗中傷をかえりみず、ここまでのことが出来る国は、唯一フランスなのではないか。ストライキとは「NO」や「嫌だ」という言葉を行動にすることである。もしかするとこのパワーが世界にも、日本にも必要なのかもしれない。

いつしか、笑い話、旅の思い出として、このストライキを語って欲しい。



のむら・しんじ フランス・パリ、日本にて、複数会社を経営する事業家。今年スタートした、フランス政府認可のワイン雑誌「33VIN」を皮切りに、食文化へのビジネスを展開中。パリコレ期間中は繊研新聞社の手となり足となりTHE SENKENパリ・オーガナイザーとしても活動。本人も何が本職かわからないほど、多方面で絶賛活躍中!



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