島精機製作所・島三博社長×「CFCL」高橋悠介氏㊦ 「デザインの未来」秘めた可能性引き出す

2021/02/14 06:29 更新


《私が作るファッションの明日》島精機製作所・島三博社長×「CFCL」高橋悠介氏㊦ 「デザインの未来」秘めた可能性引き出す

 島精機製作所の無縫製編機「ホールガーメント」は、長い時間をかけて進化してきた。使いこなすデザイナーとつながることで、物作りの可能性はさらに広がりそうだ。

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新しい価値を作る

  機械とデザインシステムをセットにしてホールガーメントと捉えると、意見は大きく二つあります。圧倒的に多いのは、もっと簡単に作れるようにしてほしいという声。アジアで雇う技術者が2、3年で辞めてしまうから、誰もが使えないと困るという意見です。もっと複雑にしてくれという要望は、ハイファッションに多い。他にはないものを作るクリエイティビティーの世界です。少数意見ですが、この機械の秘めている可能性をどれだけ引き出せるかは、我々の価値につながります。

 どちらが正しいということではなく、両方を大事にしなければいけない。誰でも使えるようにしつつも、使いこなす人次第でいろんなことができる、というところを目指していかなければと考えています。

 高橋 CFCLは圧倒的に後者です。まさにもっと複雑なものが欲しいと思っていました。歴史的にニットは庶民向けで、織りは貴族のための献上品でした。時代がここまでカジュアルではなかった頃は、パリ・コレクションでニットやジャージーのドレスを見ることはほぼなかった。今はニットのドレスもあらゆるオケージョンに対応できますが、秋冬っぽいほっこりしたイメージが強いです。

 でも、プログラミングニットは違う。糸1本から3Dプリンターみたいに服を設計できるので、ソリッドで洗練されたニットの世界が作れる。着るのは楽だし、無駄は少ないし、上品です。これは僕のやりたいことで、ニットの価値観はすごく変わる。ニットのファッションブランドは少ないし、これだけ服が余っているのに、ブルーオーシャンでもある。そこに僕のデザインのチャンスがあるかなと。

好循環を生む交流

  作り手の要望は多いです。突き返すのは簡単ですが、それをやると我々も未来がない。バランスをとるというよりは、我々自身もクリエイターの情熱を理解する地頭を持つべき。じゃあこうすればできるかも、みたいな。それによってクリエイターの理想に一歩近づく。コミュニケーションを通じて、「考えて考えて考え抜いたところに新しいものがある」というところにつなげたい。ビジネスにつながらなくても、開発につなげていく。好循環のコミュニケーションがものすごく大切です。

 高橋 ホールガーメントは使いこなすのにまだ制限があるけれど、そこで何ができるか考えるのがデザイナーの腕の見せ所。可能性がちょっとずつ重なることで、いいものができる。今は和紙を再生ポリエステルと撚糸して試しています。糸がホールに入らないかもしれないですが、それもチャレンジ。機械に向き合うことが、いいものを生み出すきっかけになるはずです。

島社長(右)と高橋氏。島精機のショールームで

(繊研新聞本紙21年1月8日付)



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