佐藤せんせの算数で極めるMDへの道⑬
大手セレクトショップでMD(マーチャンダイザー)を務めていたマサ佐藤。バリバリと仕事をしていたマサだがその実、30代後半になるまで数値管理にはまったく疎(うと)く、本格的に始めたのは大手チェーン店に契約社員として入社した38歳になってからという。
そこで鍛えられてフリーランスになったマサは、夜ごと、ホームである三軒茶屋界わいで、悩めるバイヤーやMDに講義を行っている。自称・三茶大学の先生であるマサ佐藤の20余回にわたる講義を覗いてみた。
■前回のレポートはこちら→仕入れ予算ってどう決めたらいいの? 2
* * *
Dさん。まずは前回までの仕入予算の設定・流れを一度再確認してください。
へい。
1. 架空の事業部の期の売上予算は1億円。粗利益率の予算は50%
2. 事業部の原価率の設定は35%。値入率の設定が65%
3. 今回はややこしくなるので、期首在庫・定番商品等の個々の会社特有の問題は設定しない
4. 仕入原価予算は(期間)消化率100%で設定(売れた分だけ仕入れる)
…でした。
すると仕入原価予算は5,000万円(過程は前回をご覧ください)。そこで、Mせんせから、仕入原価予算を仕入売価予算に置き換えたら、いくらになりますか?という質問を受けました。
で?いくらになりましたか?
仕入原価予算5,000万÷原価率35%で、1億4,285万7千円です。
はいそうです。で? Dさん。何か気づいたことありませんか?
事業部の売上予算は1億円売ればいいのに、実は1億4,285万7千円も仕入れている。仕入売価予算÷売上予算1億4,285万7千円÷1億円=142.6%になる。
素晴らしい。その通りです。これが、Dさんの会社のルール売上予算の140%が仕入売価予算という根拠になりません?
へえ~そうかもしれません。
このケースの場合、事前に4,285万円分の売価変更が可能だということ、よってオフ率は?4,285万7千円÷1億4,285万7千円=29.9%になります。この架空の事業部は、期で1億円の売上を上げるために、最初から29.9%のオフ率を担保しているということになります。
へえ~(悩)。
Dさんどうしました?何か腑に落ちない顔してますけど。
うちの会社は確かに仕入予算は売上予算の140%で「ザクッと」組んでますけど、期で30%近いセールをしている感覚がないんですよね~。期で30%近いオフ率ってかなりセール出来て、うちの会社のブランドイメージが下がるような気がしてならないんです。
Dさんいい質問です。確かに、期で30%オフできるということは、私がDさんから聞いたDさんのショップの特徴を考えると、オフ率の設定が高すぎるという気がしますね。このケースだと、セール期間中は70%以上のオフ率設定する商品も出てくるでしょうから、Dさんのショップのイメージとは乖離(かいり)がありますね。
そうだと思うんです。うちのショップはセールできない商品もありますから。
なるほど。ではDさんこういったケースの場合、何をしたら良いのでしょうかね?
;何をと言いますと?
:どこかの数値を変更するということです。
(考え中)・・・あっ!粗利益率の設定を上げる。ですか?
そうです。その通りです。この連載で最初に伝えたように、MDの目的として、「より多くの粗利益高を獲得する。」ということがあります。
そうでした。では、粗利益率の設定をどのくらいにしたら良いのでしょうか?
(笑)。高ければ高いに越したことはないのですが、今回は粗利益率の設定を53%。前回より3%アップすることにしましょう。粗利益53%にした場合。仕入原価予算・売価予算それぞれ金額はいくらですか?
仕入原価予算は4,700万円。仕入原価予算は1億3,428万6千円です。
:正解。さすがもう計算は完璧ですね。するとオフ率は?(計算方法は前回をご覧ください。)
:25.5%です。ただ、売上予算÷仕入売価予算を計算すると、134.3%になります。うちのショップは実際、売上予算の140%くらいは仕入をしているんですけど・・・。
:良いところに気づきましたね~。それは、おそらく商品が余ったということですよ。それは、また後々話しますね。話を戻しますと、当初の値入率の設定は65%。粗利益率は50%。値入率と粗利益率の差が15%。しかしながら、当初の設定から粗利益率の設定を変え53%に設定。値入率と粗利益率の差が12%。次回は、この値入率と粗利益率の差がブランド・ショップコンセプトに密接に関係するという話をします。
楽しみです。
では、皆さん次回をお楽しみに!
95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。
02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。
10年よりフリーランスとして活動開始。
シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。
その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、
様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。
小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。
現在、多方面で活躍中
www.msmd.jp