(第3項)ショップの在庫は足りないの?多いの?
10.売れ筋商品の立ち位置を具体的に把握するには?①
長きに渡ったこの講義も、今回の項目が最後の項目となります!
さっ、さいご!なんだかとても悲しいです。
私はせんせと付き合いが長いので、なんの感情もありません。
……気を取り直して、講義を開始いたします。まずはTさんに質問です。
Tさんがショップの仕事に従事する中で、「ディストリビューター(以下DB)は、私のショップから売れ筋商品の在庫を、店舗間移動で持っていかないでくれ!」このような経験・不満はありましたか?
あります。私が店長になってからは、そのような不満は減ったのですが、以前、売上規模が小さいショップ勤務だったときは、せんせが述べたような不満がいっぱいありました。特に、売上規模の小さいショップほど、売れ筋商品が必要なのに、DBに売れ筋商品の在庫を根こそぎ店舗間移動で持っていかれたときは、流石に納得がいきませんでした。
Tさん、ごめんなさい。
Tさん、ありがとうございます。(商品の)店舗間移動というのは、商品をできるだけ早い期間でお金に変えたい!という経営的視点から、事業運営上避けられないことですが、私の専門であるマーチャンダイザー(以下MD)の視点から、店舗間移動に関する理想を述べますと、“店舗間移動を全くせずに(商品を)売り切るのが理想!”です。
私も以前、せんせからその話をお聞きして、せんせのMD講義を受講した後、なるべく店舗間移動が少なくなるような商品の数量発注を意識しています!
MDが何故、店舗間移動を極力少なくなるような(商品の)数量発注を意識しなければならないのか?その理由を以下お伝えします。
- (売れ筋商品等)売り逃しによる売上の低下を避けるため
- 店舗間移動の増加による物流費の増加を避ける
他にもあるとは存じますが、この2点が理由です。
なるほどです。
ということで、ショップスタッフの店舗間移動に関する不満解消するために、知ってほしいことが2つあります。
①商品の販売期間(販売終了日)の設定を知っておくこと。
②商品発注数量の位置づけを感覚だけではなく、数字で具体的に把握すること。
まずは、①の商品の販売期間(販売終了日)の設定を知っておくことの重要性に関しましてお話します。
MDは基本的に商品の販売期間を設定します。なぜなら、商品の販売期間が曖昧なままにしておくと、商品の発注数量を決定する際に、その精度が大きく下がります。また、不振商品の在庫を炙り出す際にも利用しますので、MDにとってこの商品の販売期間・終了日を設定することはとても重要です。
この話は、以前DさんとのMD講義で説明していますので、知りたい方は私の連載をご覧ください。
せんせのMD講義を受けまして、私の会社では季節区分と紐づけて、商品の販売期間・販売終了日を具体的に設定しておりますので、Tさんが商品の販売期間・販売終了日を知りたい商品がありましたら、いつでも私に質問してください!と言いつつも、季節区分・コード表に具体的にそのことが記載されていますし、ショップもPCからいつでも確認できるようになっています。
はい。ショップから確認できることは知っていたのですが、これまであまり意識したことがありませんでした。明日ショップでしっかりと確認しておきます。
因みに、各商品の販売期間・終了日が理解できていると、商品を販売終了日までに売り切る!という意識を強く持つことが可能となります。また、違う視点でみれば、販売終了日が迫っているときは、自分たちのショップに在庫があった場合、DBに店舗間移動で在庫を持っていかれても、やむなしと理解することが可能となりますね。
なるほどです。
次は、②の商品発注数量の位置づけを感覚だけではなく数字で具体的に把握することについて簡単にお話します。
Tさんのショップでは、MDからショップの各商品の発注数量が伝わっていますか?
はい、店長会議の資料にも具体的な記載がありますし、その週の納品予定表にも数量が具体的に記載されています。
店長会議で記載されている商品の発注数量をしっかりとチェックしておくことで、自分たちのショップはどのくらいの数量を売れば良いのか?、事前にある程度把握することも可能となります。
例えば、販売期間60日設定で、発注数量が200点の商品があるとします。仮に、この組織の実店舗が8店舗で、ECの売上構成比が20%だった場合、ECは2か月で
→200点×20%=40点。
40点の売上をMDから期待されているわけです。
そして、実店舗の場合ですと、実店舗の売上構成比は80%になりますから、
→200点×80点=160点(実店舗分の売上点数)
→160点÷8店舗=20点(1店舗あたりの売上点数)
自分たちのショップは20点の売上をMDから期待されていると考えることができます。
こちらを事前に理解出来ていれば、ショップの目標設定にも活用できるでしょうし、DBとも抽象的ではなく、具体的なやりとりが出来そうですね。
これまで、あまりそのようなことを考えてこなかったので、とても勉強になります。
ということで、今回の講義はこれで終了です。次回はいよいよ、ショップでどのくらいの数量を売れば、売れ筋商品に該当するの?など、売れ筋商品の売上数に関して、お話したいと思います。
では皆さん、次回もお楽しみに!
佐藤正臣 95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。10年よりフリーランスとして活動開始。シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。現在、多方面で活躍中。www.msmd.jp