《連載 オムニチャネル進捗を読む 16年度ECアンケートから⑦》EC担当者に聞く パル スタッフが客とつながる
専門店チェーンのパルは、前期(17年2月期)のEC売り上げが30%超。ECをつかさどるウェブ事業推進室が各ブランド組織に横串を刺し、組織内の意思疎通度を変えている。堀田覚ウェブ推進室室長に聞いた。
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組織内の意思疎通
数年前からEC強化を打ち出し、2年前からじわり伸びていたが、前期は伸び率31.8%と大きく変化した。16年秋冬販売から飛躍し、今春夏の上半期も60%超増で加速度的に伸びた。
ECを伸ばすのは「人員と在庫」だ。サイト作り、商品写真の撮り直し、在庫補充などは、実店舗作業と同じ作業。売れるサイト作りをコツコツ行えるように人員体制を整えることが最も重要になる。
在庫は、ブランド内のEC担当とMDやディストリビューターの意思疎通の浸透度が表れる。例えば「チャオパニックティピー」はブランド事業部内にEC担当4人がいて、店舗・EC在庫量を調整する。個々のブランドのMDや生産の状況は、ブランド内にいないと分からない。EC部門がブランドに入り込んで、数値や計画を浸透させることができているかが大きい。
要は、ブランドが手を動かしてくれる運営姿勢作り。ECプラットフォームを用意しても、ブランドの売る姿勢がなければ、何も変わらない。商品をネットに上げれば、自動で売れると思われやすいが、EC業務にどっぷり漬かってもらい、売れるプロセスを理解してもらうこと。そうなると、ブランドと二人三脚でPDCAを回せる。EC部隊は号令をかけ、しぶとく作業していくことに尽きる。
在庫と顧客情報一元化はまだ未着手で、18年にやり遂げる計画。店舗連動もこれから強める。ただ、ECやデジタル施策で重要なのは「小回りが利くこと」。ネットには失敗がつきものだが、素早い決断と軌道修正がとても大事。ここは失敗を恐れずに全社一丸となってやり遂げていくことが必要となる。
生産に生かす分析
EC全体の客単価は約1万円。直営EC比率20%、モール比率80%は、まずはこれでいい。人員と在庫調整を売れるECモールに対応し、プロパーで売れる物を売れる販路にタイミングよく投入するという単純な基本作業を磨きたい。
直営ECは、ブランド情報を顧客とつなぐハブの役割。情報を求める顧客の行動ログを取って、ニーズを可視化し、購買率も高めていく。一方で、ただ売れる予測分析より「生産に生かす分析」を強化したい。これに挑むには顧客一元化でデータを蓄積、収集・分析が必要になる。
しかし、今後のECサイトはどの企業も一緒の仕組みになる。そうなった時に差別化できることは、企業・ブランドからの発信とともに、個性ある多様な個人からの発信が重要になってくると想定している。カギを握るのは、ブランドとスタッフ個々の価値とネットワークの最大化だ。会社の最大の資産である店舗スタッフを生かすため、SNS(交流サイト)、ブログ発信を実店舗のみならずEC売り上げでも最大化する仕組みにしていきたい。