《連載 オムニチャネル進捗を読む 16年度ECアンケートから⑥》EC担当者に聞く レナウン ECでも思いを伝えたい
レナウンの前期のEC伸び率は44.3%。軸は自社ECサイト「アール‐オンライン・ザショップ」。9月から百貨店インショップとEC共通の全ブランドを対象にした会員制ポイントサービスも開始し、CRM(顧客関係管理)を推進している。熊谷潔カスタマーリレーション&コーポレートコミュニケーション統括部ウェブビジネス戦略室室長に聞いた。
【関連記事】オムニチャネル進捗を読む⑤ 三陽商会担当者に聞く
選択肢を広く提供
「実店舗だけでは将来的に厳しくなる」という北畑稔社長の号令のもと、10年に自社ECサイトを開始した。社内の意識醸成が難しく、ブランドや商品をECに揃えるのに苦労したが、13年ごろから売り上げは順調に伸びている。ECで扱うブランドは当初10だったが、今は24。ブランド単独サイトで展開する「アクアスキュータム」を含めると25ある。
今は自社ECを強化する企業が多くなったが、当社は当初から自社ECに注力してきた。収益の高さが魅力であり、ファンを作る、CRMを高める点で非常に大きな意味がある。
40%超の理由は、「品揃え+欠品防止」で、選択肢の提供にある。伸びは「アーノルドパーマータイムレス」(APT)がリード。顧客がレナウンの中では若いため、ECとの親和性が高い。APTがサイト全体の売り上げも底上げし、それに次ぐのは「エンスウィート」、アクアスキュータムなど。16年9月にAPTが先行してスマートフォン用アプリを立ち上げた。17年9月には全ブランドを対象とした共通アプリを立ち上げ、会員数を順調に増やしている。客単価は1万1000円。
課題は、ECに全商品をアップできていない点。メーカーなので自社の全商品を載せたいし、EC上でより多くを見せることは消費者の満足にもなる。当社の場合、ECと実店舗の客は同じ。実店舗に行く客も、下調べとしてECを見るため、ECに商品が載っていなくては何も始まらない。載せているのは完売品含めて約8割だが、今期(18年2月期)はカバー率100%を目指す。ECと実店舗用で倉庫の場所も異なるが、ECに全商品を載せ、欠品も無くしていくには在庫の一元化は必須だ。
自販機にならない
ECは利便性が最重視されるものだが、我々はメーカーなので、商品に込める思いを伝えることはEC上でも絶対に必要だと考えている。便利なだけの自動販売機にはなりたくない。そのために、時節に合わせた商品提案などの特集コーナー作りに力を入れる。それが売り上げに直結するかというと、そういうことはないが、「我々はこういう思いで服を作っている」と伝えていくことは、ファン作りにつながると考えている。
アプリ、サイト、SNS(交流サイト)、実店舗と、ブランドにアクセスするツールが増え、客のライフスタイルも変わった。既存取引先との関係は続けつつも、ECを始め、顧客とより深く直接つながる術を模索していかないといけない。どんな形が正解か、答えは見えていない。しかし、客との関係性や購買の形が変わっていくことは確か。これからも日々判断していくしかないと考えている。