オムニチャネル進捗を読む⑤ 三陽商会担当者に聞く

2018/01/02 06:00 更新


安藤裕樹部長(右)と斉藤裕介グループ長

《連載 オムニチャネル進捗を読む 16年度ECアンケートから⑤》EC担当者に聞く 三陽商会 実店舗の客をいかに引き込むか

 三陽商会の前期のEC伸び率は40%。軸は直営ECで、比率は74%になる。その「サンヨー・アイストア」は基盤整備や実店舗とECのデータ一元化などを済ませ、いよいよオムニチャネル推進への実践段階。EC専用ブランド開発も始まった。安藤裕樹IT戦略本部ウェブビジネス部長、斉藤裕介同本部同部EC運営グループ長に聞いた。

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意思決定が加速

 自社ECサイトは08年9月に立ち上げた。当初は一部ブランドのみだったが、徐々に社内理解を深め、現在は単独サイトで販売する「クレストブリッジ」以外、全ブランドをECで展開している。EC顧客は30代後半~50代前半、中心は40代。客単価はセール時期などを通した年間平均で2万2000円前後。

 15年にオムニチャネル推進のためにEC基盤を入れ替えた。併せて、ECと実店舗の顧客管理も一元化。16年までにベースは整ったため、17年からは実践に移っている。ECと実店舗で連動したポイントキャンペーンなどを組むことが可能になり、「今日はこういう状況だから、夕方にこういう施策をしてみよう」というスピード感で実践できている。

 我々の強みは、全国に実店舗があり顧客がいること。実店舗で購入している顧客がECでも購入するようになると、売り上げは3倍になる。両方で購入している客は現状ではまだ全体の2割だが、ECの存在を知れば使う人はいる。いかに実店舗の顧客にECを伝え、より深くブランドのファンになってもらうかが課題だ。

 ECと実店舗の倉庫は同じ場所だが、完全に一元化はされていない。ECで購入希望があるのに欠品している商品を、実店舗の在庫から回す。その際、売り上げを実店舗に付ける方式だが、このようにECの重要性を社内に浸透させていかないと、なかなか意識は広がらない。EC用にどれだけ商品を割り当てるかはブランド側が決定しているが、積極的にECに取り組まねばならないという意識はブランド側にも醸成されてきた。

スマホファーストへ

 8月末に、スマートフォンファーストにするべくECサイトを刷新した。刷新前は閲覧数の約7割がスマホからになっており、それに対応した形。シンプルな構成でさっと買ってもらえるようにするとともに、特集ページのように見えるレコメンド機能を強化し、頻繁にサイトを訪れるユーザーにも常に新鮮に感じてもらえるようにしている。商品画像も全てモデル撮影写真に切り替え、本社内に撮影スタジオも設けた。

 会社全体としてブランド数が減り、在庫も圧縮される中で、EC売り上げは17年12月期に前年比25%増を目指している。EC上で販売する商品を増やすため、9月から初のEC専用ブランドとして、30代レディス向けの「ルジュール」の販売も始めた。IT戦略本部ウェブビジネス部がMD、仕入れ、マーケティング、SNS(交流サイト)、販促まで管轄する。実店舗が無い分、ウェブ独自のプロモーション実践ができ、今後1年間検証していく。



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