ニュース2017⑥ 百貨店の免税売上高が復活

2017/12/31 11:00 更新


 17年はインバウンド(訪日外国人)消費が復活した1年となった。16年は爆買いが収束し、百貨店の免税売上高は一昨年対比でマイナスとなったが、今年は一転してプラスとなり、15年をも大きく上回っている。17年の訪日外国人旅行消費額は昨年の3兆7476億円を上回る4兆円を超える見通しで、政府は20年に8兆円、30年に15兆円を目標に掲げている。小売りの現場では、インバウンド需要をいかに取り込むかがますます重要になる。

【関連記事】ニュース2017⑤ 販売スタッフの働く環境改善へ

◆増え続ける訪日客

 免税売上高が伸びている最大の要因は、訪日客が依然として増えていることだ。日本政府観光局によると、17年1~11月の訪日外国人客数は前年同期比19%増の2616万人で、16年年間の2404万人を早くも上回った。17年累計は過去最高の2800万~2900万人で着地する見込みだ。ビザ発給要件の緩和やLCC(格安航空会社)を中心とした航空路線の新規就航・増便、クルーズ船の寄港増加が押し上げており、20年に向けては東京五輪の開催が追い風となってさらに拡大することが確実といえる。

 訪日外国人客数が安定して拡大する一方で、昨年に免税売上高がマイナスに振れたのは、円高・人民元安が進んだことに加えて、中国政府の関税率引き上げで爆買いのメリットが薄れたためだ。しかし振り返ってみると「転売目的の業者が減ったが、旅行での個人消費はそこまで減っていなかった」(各百貨店)という。

◆客単価も回復

 実際、今年の百貨店の免税売上高は好調だ。日本百貨店協会が発表した全国百貨店の1~11月の免税売上高は、前年同月比46.5%増の2425億円。足元の11月は免税売上高が前年同月比74.5%増の253億2000万円で12カ月連続のプラス、購買客数は55.1%増の35.3万人で、58カ月連続のプラスになった。人気のある化粧品や食料品の消耗品は126.2%増の110億円、ラグジュアリーブランドのファッションアイテムや時計などを含む一般物品は48.5%増の143億2000万円と、どちらも大きく伸長。1人当たりの購買単価は12.6%増の7万2000円だった。訪日客の人気の商品カテゴリーは、1位から順に化粧品、ハイエンドブランド、婦人服飾雑貨、食品、婦人服で、ファッションビジネス業界も恩恵を受けた。

 インバウンドは為替や国の政策の影響が反映されるため依存しすぎるとリスクもはらむが、すでに大手百貨店では全社売上高に占める免税売上高の構成比は5%以上で、心斎橋・銀座などの立地では20%を超えている。高額品などの客単価が減少する懸念もあるが、増える訪日客をいかに店に呼び込むか、複数購買による一人当たりの買い上げ額をどう増やすか、日本人客同様のきめ細かいマーケティングや顧客戦略が求められる。

阪急うめだ本店は、中国のインフルエンサーによるライブ配信で越境ECや集客のトライアルを行った


=おわり



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事