SCや百貨店で、営業時間の短縮や休館日を導入・拡大する動きが相次いだ。産業界全体で人手不足問題が深刻化し、販売スタッフの採用も難しくなるなか、労働環境を改善し、離職防止を含めて人材を確保するのが目的だ。
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◆施設に合わせて見直す
主なSCでは4月から営業時間短縮の動きが目立った。ルミネが12施設で施設ごとの特性に合わせ、土日・祝日だけの実施も含めて閉店時刻を30分早め、ピオレ姫路(神戸SC開発)が全5館のうち、物販中心の2館の閉店時刻を午後9時から午後8時に変更した。
福岡地所グループが大分市郊外で運営するパークプレイス大分は6月から、GMS(総合小売業)のイオンを除く専門店の閉店時刻を1時間早め、物販とフードコートは午後9時までとした。12年に全館で営業時間を午前9時~午後10時に延ばしたイオンモールも施設特性に合わせて営業時間の見直しを進め、午前10時~午後9時の施設が増えている。百貨店では博多阪急が金・土曜日を除き、地下階から4階までの閉店時刻を従来の午後9時から1時間早めた。
休館日はルミネが15年から2日増やしたほか、アトレが閉店時刻の見直しと併せて、同年から順次拡大。今期(18年3月期)も施設の特性に合わせて、増やしている。JR西日本グループの京都駅前地下街ポルタと京都駅ビル専門店街ザ・キューブはこれまで無休だったが、今期から休館日を2日導入した。
◆売り上げは変わらず
営業時間の短縮や休館日の増加による売り上げの減少を危惧する施設や店舗も少なくない。今年から閉店時刻を午後9時30分から30分早める検討をしたが、同時間帯の昨年の年間売上高が10億円だったため、見合わせた駅ビルもある。ただし、営業時間短縮や休館日の導入・拡大を理由に売り上げが落ちた施設はほとんどない。
ルミネは営業時間を短縮した4月以降も全社売り上げを伸ばしている。営業時間を短くした分、売り上げは減るが、「他の時間帯で十分補えた」という施設が多い。平日の閉店時刻を午後9時にしたルミネ有楽町の1日のうちの売り上げのピークは以前と同様に午後7~8時だが、「午後4~5時にもう一つのヤマができた」(諏訪博取締役営業本部長兼営業部長)という。「お客に営業時間と営業日が浸透していれば問題はない」と指摘する施設は多い。
営業時間短縮と休館日の導入・拡大を、出店企業や販売スタッフの大半は歓迎している。「労働時間が短くなった分、接客に集中できるようになった」というスタッフも多い。休館日の前日にスタッフとの懇親パーティーを開くなど、ES(従業員満足)活動に活用するSCもある。社会全体に働き方を見直す機運が高まるなか、来年もこうした動きは広がりそうだ。
