予約してでも会いに行きたい 靴の修理動画で人気のシヨミフさん、荻窪に実店舗オープン

2026/06/08 11:00 更新NEW!


 シヨミフさんは、ネットで話題の一風変わった靴修理職人だ。音声読み上げソフト「ボイスロイド」を使って、靴修理の様子を発信している。動画のファンなどを相手に郵送で修理を受け付けていたが、リアルな交流を求めて26年4月に東京・荻窪に実店舗をオープン。予約をメインに全国から客が訪れる。

(高塩夏彦)

動画で楽しさ伝えたい

 原体験は15歳の時。雑誌でレザー小物主力ブランド「ザ・シュペリオールレイバー」のバッグを見た瞬間「雷に打たれた」という。その後、中古で同ブランドのブーツを購入し、靴にものめり込んでいった。

キャリアのきっかけとなった「ザ・シュペリオールレイバー」のブーツは今も大切に店に飾っている

 高校卒業後は靴職人に近い仕事で、より安定していそうとの理由から、義足技師の専門学校へ通ったが合わなかった。中退し靴修理店でアルバイトを始めたところ、今度は肌に合った。毎日、様々な靴に触れて素材や構造を知ることができるのが楽しかったという。個人で靴修理を受ける副業も始めた。そうするうちに「大好きな革のこと、靴修理の様子を多くの人に見てほしい」との思いを持ち、動画の投稿を始めた。

 「ニコニコ動画」に初投稿したのが約9年前。1本目は革を煮込んだりして食べるという衝撃的な内容だった。ただ、ボイスロイド音声の軽妙な台本で、なめし方の違いなども解説する面白さが受けて話題になった。「当時はユーチューバーもいない時代。狙ったわけではないが新鮮だったのかも」と振り返る。

 以降は靴の修理動画がメインになった。意識したのは高級靴をあえてあまり扱わないこと。靴修理のハードルを下げたかったからだ。結果「靴が直してはけるなんて知らなかった」といった反応が集まり始めた。投稿先をユーチューブにも広げ、再生数とファンは日に日に増えていった。

心がつながる実店

 修理依頼も増え約3年前に独立した。依頼には普通、捨てられてしまうような手頃な靴も多く、その背景にある思い出や感情に魅力を感じたという。今度はメール越しだけでなく、客と直接触れ合いたいと思い、店の開店を決意した。

 実店舗「いわし革店」は荻窪駅から徒歩20分と、決してアクセスは良くない。平日は完全予約制でフリー入店は原則土日のみ。一人ひとりと密に話したいという気持ちの表れだ。それでも都内はもちろん、地方からも客が集まる。中には半年待ちのケースもある。

小さな工房兼店舗にひっきりなしに予約客が訪れる

 客層は様々だ。靴や革好きとマニアックに語り合うこともあれば、「親からもらった靴を直してはきたい」若者もやってくる。スニーカーのカスタムの依頼も少なくない。

大量に積まれた革はシヨミフさんのコレクション。客と革を囲んでマニアトークをすることも

 近日中にオリジナルの革靴のオーダーサービスも始める予定だ。靴の構造を知り尽くした修理職人らしく、作り込みにはこだわる。当然、リペアの相談にも乗りながら長く愛用してもらいたい考えだ。

 「〝物を大事に〟みたいな啓発がしたいわけではない。ただ、自分をきっかけに修理して使う文化の魅力を知ってもらえたらうれしい」。将来の目標は「求められることに一生懸命応える。そうすればまた何か見えてくる」と見据える。

几帳面に整理された道具棚などから工房っぽさを感じられる

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