ニュース2017③ デザイナーブランドビジネスの変化

2017/12/28 11:05 更新


 17年のデザイナーブランドのビジネスを振り返った時、いくつかのエポックメイキングな事例を挙げることができる。その一つはハイファッションにサステイナブル(持続可能)の波が押し寄せていること。もう一つはデザイナーブランドの成長戦略を巡る新しいビジネスモデルが広がっていることだ。

 欧米のコレクションも90年代のように新進デザイナーが次々と登場する時代ではなく、メンバーも固定化している。

 ラグジュアリーブランドを中心にデザイナーの交代劇が続いているが、バイヤーやジャーナリストの中には冷めたムードが漂っている。それがある種の閉塞(へいそく)感となって市場を覆っている。

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◆業界を挙げて新たな発掘

 デザイナーブランドがラグジュアリーグループの傘下に入った90年代後半以降、独立したデザイナーブランドがビジネスを継続することや若手デザイナーが起業してビジネスを成長させるのが難しい時代を迎えた。今、ラグジュアリーブランドをはじめ、業界を挙げて、新たなデザイナーの発掘を進めている。それは、才能のある若手デザイナーの存在なくして、ファッション産業の未来がないことにラグジュアリーブランドも気づいているからだ。

 しかし、ラグジュアリーグループのビジネスコントロールにはプラスの側面もある。それは、ハイファッションのブランドもサステイナブルを巡って企業としての倫理観を示すようになったことだ。

◆海外を視野に入れる時代

 一方、インディペンデントのデザイナーブランドのビジネスでは、ブランドの成長規模とスピードを巡る新しい仕組みが目立った。独立系のデザイナーブランドは、90年代後半を境に起業しにくく成長規模が遅くなった。かつては一定の売り上げ規模だった日本の地方都市のデザイナー市場も、かつてほどの勢いはない。そのため、若手~中堅デザイナーも一定の規模となると、海外市場を視野に入れる時代を迎えた。

 今年からパリでの発表に切り替えた「ビューティフルピープル」や「アキラ・ナカ」をはじめ、メンズでは「ヨシオ・クボ」「サルバム」がミラノ・コレクションに参加している。

 しかし、海外市場を含めたビジネス展開を考慮した時に、問題になるのは経営資源だ。そのため、東京の若手~中堅デザイナーが商社や小売事業を手がける企業と資本提携を進める事例が増えた。今年を振り返っても、「アタッチメント」「ファクトタム」「ファセッタズム」などが資本提携を進めた。いずれも創業10年あまりで、売り上げは5億~10億円という規模のブランドだ。安定した経営資源を求めるデザイナー側の要望と、ブランド開発力や商品開発力のノウハウを蓄積したい提携先との思惑が一致して、新しいビジネスの仕組みが生まれている。

パリへ発表の場を移した「ビューティフルピープル」の18年春夏コレクションから



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