ウェアラブルIoT(モノのインターネット)製品メーカーのミツフジが、福島工場(福島県川俣町)の技術をフル活用し、24時間稼働(交代制)で衛生マスクを作り続けている。抗菌・防臭性を備え、「家庭で洗って繰り返し使える」マスクだ。3月中旬に発表して以来、注文が舞い込み、現在の予約枚数は約6000枚。当面は月産5万枚を目標に生産を続ける。
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発売した「ハモンエージーマスク」(1枚3000円)は、無縫製横編機「ホールガーメント」で立体的に編み立て、顔にフィットするよう作られている。医療用ウェアラブル製品に使っている制菌性を備えたポリエステル・ポリウレタン糸を採用。長繊維を使い、編地表面の毛羽立ちを抑える。優れた伸縮性もあるため快適な着用感が特徴だ。マスクの内ポケットには、抗菌・防臭性のある銀メッキをした独自のナイロン繊維「エージーポス」で作ったシートを挟み込み、長時間にわたって清潔に使える仕様にした。家庭洗濯の耐久性は約50回という。
福島工場は、ウェアラブル製品の研究開発・生産を目的として1年半前に完工した。川俣町民を対象にウェアラブル技術を活用した「健康まちづくりプロジェクト」の推進や、暑熱対策用のアルゴリズムなどに取り組んできた。このマスクも福島工場から生まれた。新型コロナウイルスの感染が国内でも広がる中、複数の法人顧客からマスクを作れないかと相談を持ちかけられたことをきっかけに、「できる限りの対応をしたい」と、2月10日から試作に着手した。公的試験を経て、1カ月という急ピッチで発売までこぎつけた。
「より多くの方々にマスクを届けられるように日々努力している」と話すのは、工場に勤める渡辺義則さん。「培ってきた技術と経験を生かし、着け心地の良さと安心・安全を追求したマスクができた」という。三寺歩社長は「今回の状況に対し、会社としてどのように向き合うべきか日々、悩み、試行錯誤をしながら取り組み続けている」と話す。「一歩ずつだが、皆様の不安や困りごとに応え続け、産業人としての使命を果たしていきたい」と力を込めた。