《私のビジネス日記帳》もう「まさか」とは言えない 金藤純子

2024/07/10 06:25 更新


 平成最悪の水害と呼ばれる西日本豪雨から7月6日、6年が経った。線状降水帯が原因で記録的な大雨が続き、死者は237人、住家被害の全壊は6767棟に及んだ。私も倉敷市真備町の実家と自宅2軒が全壊した。この後も毎年のように激甚災害が発生し、皆一様に「まさかここが被災するとは」という。私もハザードマップを見ておらず、真備町が明治以来14回も洪水があった水害常襲地域と知らなかった。

 しかし、水害は自社には関係ないと断言できるだろうか。国土交通省の水害統計によると、過去10年間に全国の市町村の98%で1回以上の水害が発生している。一度も水害が起きていない市町村はわずか41に過ぎない。

 13年からの10年間の全国水害被害額は約7.2兆円。18年が1.4兆円、19年が統計開始以来最大の2.1兆円。関東・東北地方を中心に、142カ所で堤防決壊が発生した年だ。

 自然災害の増加が原因で今年度、水災リスクに応じた火災保険料の値上げが予定されている。「まさか」はもう口にできない。民間企業も水災害を想定した備えをする時代が来た。

 自然災害はもともと存在していた「まちの弱み」を直撃し、人口減少社会の社会的課題を一気に噴出させる。まちの課題を一番知る商業施設や専門店と共に防災まちづくりを進めていきたい。

 そう感じた私は被災から2年後、防災啓蒙(けいもう)活動を行うEnPalを起業した。

(エンパル代表)

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