26年春夏欧州メンズファッションウィークで、アイテムの使い方に変化が起こっている。見慣れた服も異なる使い方をすると新しいスタイルを作ることができる。
例えば、春夏はテーラードジャケットをパンツにたくし込んでシャツのように着るスタイルが広がった。テーラードジャケットといえば、男性らしさや権威の象徴。実際に米国のトランプ大統領はその権威を強調したいのか、いまだにダークスーツに赤のネクタイという〝パワースーツ〟スタイルのままだ。ジャケットをパンツにたくし込むことで、そうした社会的な関係性や捉え方が変わる。まるで軽やかなシャツのようになり、ユーモラスでさえある。
下着や肌着、パジャマを外出着のように見せるのも広がった。昨今のウィメンズのトレンドの体のラインを見せるスタイルとも少し異なる。完璧なエレガンスよりも、そこに親しさや温かみを加えることで新鮮さを出す。90年代初めのグランジムーブメントの時に、ニルヴァーナのカート・コバーンがパジャマを着ていたのを思い出す。
もちろん、こうした着こなし方は、社会や環境の変化を背景にしている。欧州の夏が40度近くに到達する時代には、それにふさわしい着方が生まれてくる。そして豪華さや権威の誇示ではない親密さもまた、今の時代の必然なのかもしれない。