ミュージアムへ行こう!vol.2

2015/08/16 10:55 更新


 この連載では、デザインやもの作りのインスピレーション源となるような、知る人ぞ知る服飾系ミュージアムを紹介します。

◇  ◇

東京・目黒アクセサリーミュージアム

希少なコスチュームジュエリー2000点を一堂に

 東京・目黒区の祐天寺駅から徒歩6分、閑静な住宅街の中にあるアクセサリーミュージアムでは、常時2000点を超えるコスチュームジュエリーを展示している。コスチュームジュエリーは、貴金属や宝石などの高価な材料を使って作るジュエリーとは異なり、樹脂やガラスなど、その時代の流行や表現にふさわしい素材で作られたファッション性の高いジュエリーを指す。世界でも、こうしたコスチュームジュエリーのみを集め、展示する美術館は珍しい。

デザインと技術の変遷学ぶ

 館内には、ビクトリアン、アールヌーボー、アールデコ、オートクチュール、プレタポルテ、アヴァンギャルドと六つの部屋に分かれ、1830年代から1990年代までの各時代に作られたコスチュームジュエリーが展示されている。「ミリアム・ハスケル」「コロ」といった代表的なコスチュームジュエリーブランドをはじめ、欧州の著名なコレクションブランドの希少なビンテージ品から、グラマラスな80年代の大ぶりのアクセサリーも並ぶ。当時流行のドレスや雑貨、カトラリーなども展示され、各時代の特徴的なデザインと共に、技術の変化や歴史的背景などをも感じ、学び取ることができる内容だ。

アールデコの部屋。コスチュームジュエリーのほか、絵画やカトラリー、ドレスなども並ぶ

 

若手育成と業界活性化に

 館長の田中元子さんは、アクセサリーメーカー大手、東洋産業商会創業者を父に持ち、自らも同社で50年以上にわたりデザイナーとして活躍してきた。ミュージアムのコレクションのほとんどは、自身や部下のクリエーションのヒントにと、世界各国から田中さんが収集し続けてきたものだ。

 ある日、「昔は当たり前のようにあった技術の多くが、今は無くなっていることに気づいた」と田中さん。かつては一つずつロウ付けしていたパーツも、今は一度に型で取れるようになっている。簡単にきれいな製品が作れるようになった代わりに、廃れていった技術が無数にある。父の代から出入りしていた職人も、いつの間にか姿を見せなくなっていた。

 「業界が小さいせいか、そういったものを伝え、残す場がなかった。子供の頃からコスチュームジュエリーに触れてきた私がやらねば」と決意。社長でもある夫に相談し、会社を売却。3年がかりで構想を練り、自宅を改装し2010年にミュージアムを設立した。

 若いクリエーターやバイヤーの育成に役立てば、との思いも強く、企業からの要請を受けてミュージアムで勉強会を開いたり、大学で講義をすることもある。また、イベントルームでは企画展も実施。ミュージアムショップも併設し、ビンテージのアクセサリー、コスチュームジュエリーの販売を行っているほか、アクセサリー教室や修理、リメークなども随時行っている。

 なお、8月は1カ月休館となっている。

■データ
住所=東京都目黒区上目黒4の33の12
電話=03・3760・7411
開館時間=10~17時(最終入館時間16時半)
定休日=月曜、第4、5日曜日、年末年始、5月連休、8月は休館
入館料=一般1000円、学生600円

 



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