三越伊勢丹のギフト特化型EC ミレニアル世代へ新体験

2020/02/10 06:30 更新


《販売最前線》三越伊勢丹のギフト特化型EC ミレニアル世代へ新たな体験

 三越伊勢丹はECの新規事業を本格化している。18年7月に食料品の定期宅配をスタートしたのを皮切りに、化粧品、婦人服SPA(製造小売業)、パーソナルスタイリング、19年10月からギフト、紳士服パターンオーダー(PO)のオンラインサイトを相次いで立ち上げた。成長戦略の柱となる店頭とECをシームレス化するデジタル事業の一環で、百貨店の販売データ、接客ノウハウを生かしたサービスで顧客接点を広げる。

(松浦治)

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 ギフト特化のEC「ムードマーク・バイ・イセタン」は19年10月にスタートした。百貨店ECはこれまで総合サイトに様々な領域の掲載商品を増やしてきた統合型だったが、三越伊勢丹は商品領域ごとに専用ECを切り離した専門特化型へ戦略転換した。その一つがギフトで、百貨店の強みである商品領域を切り出しすことで「分かりやすさに加えて、百貨店の主力顧客だけでなく、ミレニアル世代をはじめとした新規顧客を広く獲得するのが狙い」(デジタル事業部新規事業ディビジョン)という。

19年10月にスタートした「ムードマーク・バイ・イセタン」
フード・ドリンク、クッキング・テーブル、インテリア、ビューティー、ベビーの5カテゴリーを掲載

◇カジュアル・プチギフトに特化

 中元・歳暮を中心とする百貨店ギフトはマーケットが縮小の一途にある。一方で「カジュアルギフトやプチギフトは年率5%で増え続けている」。ただ、中元・歳暮以外の用途でギフトを探そうとしても、店頭はフロアで大きく商品分類されており、大切な人に特別な贈り物を探し出すのは至難の業だ。ムードマークはミレニアル世代を顧客対象にすることで、百貨店と切り離し、総合サイトと異なるUI・UX(ユーザーインターフェイス・ユーザーエクスペリエンス)の見映え、使い勝手の良いサイトの構築を目指した。単に商品を提供するだけでなく、ミレニアル世代のリアルな日常を彩るアイテムを選定、編集した。贈った人にとっても、贈られた人にとっても特別な体験を提供するのが狙いだ。

 その大きな特徴の一つがソーシャルギフト機能だ。SNSを活用し、住所を知らない相手にもギフトが贈れる。贈り主は同サイトで商品を選んで決済後に発行される受け取り専用URLをLINEやメールでシェアするだけで完了する。届け先住所と配送日時は相手が入力する仕組みだ。この「ソーシャルギフト市場は20年に1000億円を破すると予測されている」という。

ソーシャルギフト機能のスキーム

 もう一つはコンシェルジュ機能だ。「自分と世代や性別が異なる相手へのギフト選びは悩む」といった要望に答えるため、贈る相手、好きなカテゴリー、テイストの三つの質問に答えるだけでお薦めのギフトをチェックできる。店頭での販売データ、接客ノウハウを生かしてシステム構築した。さらに、専用のフォームに入力、送信すれば、伊勢丹のバイヤーや販売員が個別にメールで相談に応じる。

コンシェルジュ機能のスキーム

 サイトには500~20万円の食・美・住などのカテゴリーで2000アイテムを掲載する。「ミレニアル世代はギフトを贈ることを自己表現の一つととらえている」ことから、シンプルなデザインのラッピングや10種類以上のメッセージカードを独自に用意する。

◇百貨店の人的サービス加えて

 競合する他社のギフトECでもソーシャル機能やチャットによるコンシェルジュサービスを備えるサイトは少なくないが、三越伊勢丹の商品調達力や信用力の強みを生かすことで競争力を高める。特に顧客とのコミュニケーションは伊勢丹のバイヤーや販売員が培ってきた商品知識、販売サービスの知見に基づいた独自の人的サービスを加えて百貨店のノウハウを生かす。

 約3カ月の販売実績は利用者の7割が20~30代で、自社カード比率は10%に満たない。「想定通りに新規顧客の開拓に結び付いた」わけだ。客単価は5000~5500円で店頭に比べると低いが、百貨店で常時扱うことができない低価格帯の商品が多いサイトの特性が示された。店頭と異なるEC独自の商品が約5割を占めており、今後も独自MDを増やしていく。

 クリスマス商戦では体験型ギフトが好評で、カフェ、ホテルのアフタヌーンティーの利用券がベストセラーとなった。また、ソーシャル機能の利用率は通常期の20%からクリスマス期に30%へ高まった。サイトにクリスマス特集ページを掲載するなどシーン毎にコンテンツをまとめた効果が表れた。検証結果を踏まえて今後の品揃え、サイトの在り方に反映させていく。

eギフト担当の重松祐歌さん(左)、福森拓さん

■店舗とECをシームレスに

杉江俊彦三越伊勢丹社長

杉江社長

 ECの考え方はまず店頭に来てもらうことが第一。お客様との情報のやり取りを基本にしている。CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)を通じて、店舗、ECをシームレスに行き来してもらうプラットフォームを整えていく。

 それに加えて、百貨店ならではのECを強化する。単に掲載商品を増やしていくだけでは大手専業に勝てない。総合サイトでなく、強みの商品カテゴリーやサービス機能を切り出してマーケットを広げる。今後もこうしたニッチ(すき間)で専業ECサイトを立ち上げていく。

(繊研新聞本紙20年1月31日付)



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