三越伊勢丹は11月25日から、リモートショッピングアプリをスタートした。300ブランド、1万5000SKU(在庫最小管理単位)から試行し、将来的にEC未掲載商品を含む伊勢丹新宿本店で扱う全商品約100万SKUをオンライン上で接客・販売できるようにする。コロナ禍で、来店を控える傾向が続いているが、店舗に行かなくても自宅で気軽に購入できる環境づくりを整える。
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接客アプリを新規導入したのは「店舗と同様の買い物体験をオンラインで提供し、お客様とつながっていくため」(三部智英三越伊勢丹執行役員MD統括部デジタル推進グループ長)という。三越伊勢丹は、緊急事態宣言に伴う休業明けの6月から、LINEやZoomを使ったオンライン接客を急拡大していたが、動線案内が煩雑で、一部の顧客や商品に対象が限られていた。一つのアプリでチャットによる会話から販売員による動画接客、決済までを一貫した。
接客アプリの最大の特徴点はEC未掲載の店頭だけの取り扱い商品を購入できる〝個品登録〟機能を導入したこと。接客の中で顧客が欲しいと思った店頭の商品を販売員がスマートフォンやタブレットで撮影し、JANコードなどのバーコードをスキャンするだけで、顧客の専用カートに入れることができる。POS(販売時点情報管理)とも連動して決済する。ECでは販売開始前の商品登録やささげ(採寸、撮影、原稿作成)が必要だが、接客アプリではこれらが不要となる。一方で、既存のECは20年度に掲載が15万型に達する見通し。新アプリの導入で、これまでの型数の拡大から売れ行きの良い商品の絞り込みなど質と効率の追求へ戦略を転換する。
接客アプリは当初、伊勢丹新宿本店の特選、婦人服、紳士服、化粧品の14売り場を対象とするが、インテリア、食品など全ての領域や商品に広げる。オンライン接客の担当は店頭を兼務しながら約50人体制で始めたが、今後は要員を増やす。現在は自社社員だけで運営しているが、オペレーションや機能の修正など体制が軌道に乗り次第、取引先の販売員にも接客アプリを活用してもらう。
オンラインショッピングのウェブ会員IDを通じて、接客や購買時に得た顧客情報を一元化し、顧客一人ひとりに対するレコメンドの最適化に結び付ける狙いだ。同社では「接客の在り方そのものを見直すきっかけになる」とOMO(オンラインとオフラインの融合)を加速させる。