経済産業省は10月1日、日本繊維産業連盟と会合し、繊維業界に対する価格転嫁と取引適正化の促進を要請した。来年1月から、下請代金支払遅延等防止法(下請法)が改正されて「中小受託取引適正化法」(取適法)として施行、発注者に価格交渉が事実上義務化され、約束手形による支払いが禁止されることなどを踏まえたもの。経産省からは大串正樹副大臣、伊吹英明製造産業局長、山下隆一中小企業庁長官ら、繊産連からは日覺昭廣会長、富吉賢一副会長兼事務総長らが出席した。
【関連記事】経産省生活製品課長・渡邉宏和氏に聞く 繊維産業政策の重点は?
大串副大臣は「物価高に負けない賃上げを中小企業にまで浸透させるためには、価格交渉の促進と転嫁の徹底が不可欠」と強調した。その上で、繊維業界に対して、①下請法の趣旨に反する不適切な取引に関する点検と改善②取適法での約束手形の廃止を踏まえた現金払いの促進③取適法の対象外企業を含めた適正な価格転嫁の促進と自主行動計画による各企業での具体的な取り組みの実施④サプライチェーン全体に価格転嫁を浸透させるための価格交渉しやすい環境の整備⑤「パートナーシップ構築宣言」の実施・拡大⑥労務費の価格転嫁に関する政府の指針の周知・徹底――を要請した。
改善すべき不適切な取引の事例として、「協賛金の恒常化」を挙げ、現金支払いについては「最新調査では繊維業界の取引に占める現金払い比率は79%で、他業界と比べて低い」と指摘。価格交渉・転嫁については「3月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査で、繊維業界の転嫁率が下がったことが課題」とした。
これを受け、日覺会長は「繊産連として20年以上にわたって取引適正化対策に取り組み、強化している。ただし、価格転嫁は十分ではなく、歩引きや手形取引もまだ残っている。取適法施行に向け、下請取引以外を含めて対策をさらに強め、自主行動計画も改正する」などと語った。