《めてみみ》物作りに向き合う

2018/05/09 04:00 更新


 中国・杭州の中国美術学院を訪れた。広大な敷地には林や池、そして水郷のような地域があったりと自然に富んだ恵まれた環境だった。それぞれ校舎は設計した建築家が異なり個性的な建物が並んでいた。日本の著名な建築家の設計による校舎もあった。美術学院でデザインを教えている裘海索教授に中国のデザインの現状について話を聞いた。

 繰り返し強調していたのが伝統と現代は反目しているのではなく、連続していて共存できるという考え方だった。文化大革命の終了直後に大学へ入りデザインの勉強を始めた。大学で教檀に立ちながら浙江省を中心とした伝統文化の保護に携わってきた。手掛けた国内ブランドの製品がヒットしたこともあるという。

 教える時、理論と実践の両方を大切にしているという話も、こうした経験が裏付けになっているのだと感じた。現在もデザインする際には中国画からインスピレーションを受けると同時に、自然にある植物などに着目している。

 伝統的な手法が使いこなせるようになるには深い理解が必要とも。「私自身が、伝統的な技法を用いながら新しい物を残せば、若い人たちに何らかの形で参考になるのではと思っています」。優しい語り口調と裏腹に、強い意志が伝わってきた。物作りに向き合う人の思いに国境はないと感じた瞬間でもあった。




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