百貨店のインバウンド需要が都心部中心に加速している。円安を追い風にして、ラグジュアリーなど高額品がけん引する。19年度に8割を占めた中国の戻りが遅れていたが、6割まで回復した。訪日客の増加は韓国、台湾、香港といった東アジアをはじめ、米国などにも広がった。
免税売上高は23年度に続き2年連続で過去最高を更新する見通しだ。24年上半期は三越伊勢丹ホールディングス(HD)が862億円、阪急阪神百貨店が692億円、大丸松坂屋百貨店が650億円(博多大丸含む)、高島屋が620億円だった。
通期では三越伊勢丹HDが1780億円、大丸松坂屋百貨店が1330億円を見込み、阪急阪神百貨店は1260億円に上方修正した。一方、高島屋は見通しを100億円下げて1150億円に修正した。「上半期は円安の影響で想定を上回ったが、下半期については為替の変動が不透明」という。
当面は円安基調の見通しとはいえ、為替に左右されない次のフェーズに向けた戦略が今後の需要取り込みには欠かせない。そこに共通するのはCRM(顧客情報管理)の強化だ。国内客と同様に顧客化し、LTV(顧客生涯価値)を高める。外商のノウハウを生かした接客サービス、顧客ロイヤルティープログラムを拡充し、より特別な商品、体験を提供しようとしている。