《めてみみ》変化の美徳

2022/03/18 06:24 更新


 22~23年秋冬デザイナーコレクションで、トレンドの周期が大きく変わった。秋冬は春夏からのトレンドを色濃く反映し、ファッションの実用性を強調するシーズンとなった。「トレンドは継続しても良い」という考え方を改めて主張するブランドも出てきた。

 近年のトレンドは、3年くらいかけて緩やかに変わってきた。1シーズンに登場する六つのトレンドのうち新しい流れは二つほど。無くなっていくものが二つで、残り四つは前シーズンから変化しながら継続してきた。

 かつては、激しくファッションが移り変わっていた時期もあった。その最たる例が80年代だろう。パリ・コレクションに参加するデザイナーたちは、新しさこそがファッションだと競い合った。変化することが美徳とされ、同じ場所にとどまることを嫌った。今、振り返ってみると、新しさを求めるあまり、デザインとしては安易な変形に陥っていたものも少なくない。しかし、当時は何よりも変化が求められた。

 前シーズンの流れを発展させるというシーズンも確かにある。しかし、新しいものを追い求めない姿勢をどうとらえたらよいのか。ファッションは時の流れには逆らえないものだからだ。今は、かつてのようにドラスティックな変化は求められず、より微細な修正のデザインが求められる時代なのかもしれない。



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