《めてみみ》初速と収束の間

2017/08/16 04:00 更新


写真はイメージです

 「一番変わったのは情報量でしょうね」。セレクトショップの店員さんが口を揃える。10年前に比べ、店に来る客が自分の趣味や好きなものに対して持っている情報は圧倒的に増えたという。

 渋谷のある店は、今秋スタートの新ブランドの商品を7月下旬に投入したところ、まだセール目当ての客が多いなか、そのブランド目当ての客が買いに来た。

 作っている会社は別のブランドで20代客の支持を得ており、新ブランドを始めるという情報もSNS(交流サイト)で流していた。どんなデザインで、どこで買えるか事前に把握していたファンが、発売日を目掛けてやってきたわけだ。

 別の店はあるロックバンドとの協業商品を企画した。発売日にバンドメンバーが来店し、サイン会も開くことをネット経由で流したところ、当日の開店前に数百人の行列ができた。協業商品はその日だけで数百万円を売り上げた。

 SNSで自分の好きなモノやコトを四六時中チェックしているので、情報を流せばあっという間に食いつく。ただ、店頭での売れ行きは「初速はあるが、すぐに収束する」。愛好家同士の結びつきは強くなったが、一方で共通の趣味や嗜好(しこう)を持つグループの細分化も進んでいるためだ。コアなファンに向けた仕掛けを、きめ細かく連打しないと客が呼べない時代になっている。



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