中東情勢の緊迫が続いている。新聞各紙は、イラン・イスラエル双方の民間人の被害を伝えている。高層ビルを背景にドローンと防空ミサイルが飛び交う映像は、日常と隣り合わせにある戦争のリアルをこれでもかと見せつけてくる。街行く人々が戦火に追われているかと思うと心が痛む。
パレスチナ問題も終わりが見えない。人々が避難を余儀なくされ、家や家族を失い、病気や飢えに苦しんでいる。
ニュースのたびに思い出すのは、以前取材したテルアビブを拠点とするストリートブランド「アディッシュ」のことだ。イスラエル人やパレスチナ人の若者ら4人が18年に設立し、パレスチナ刺繍で彩ったシャツやTシャツを作っていた。戦争で物作りが難しくなり24年春夏を最後にブランドを休止した。今は彼らの無事を祈るばかりだ。
記者の自宅クローゼットにある彼らのTシャツを見るたびに、ファッションは平和産業だということを改めて思い知らされる。人種や拠点はどうであれ、平和に暮らしていることが大前提にある。
アディッシュは、敵対する国同士の若者が手を組み、前向きに自分たちの文化を伝えていた。ブランド名はヘブライ語で「無関心」の意味。知らんぷりせず、現状を見てほしいという思いが込められている。まずは世界に関心を持つことが、平和への一歩につながる。