松尾捺染 「繊維の街・船場」の再生を目指す

2017/08/02 04:26 更新


 染色加工の松尾捺染(大阪市)は、大阪・船場の創業地に開設したカフェ・ギャラリー施設「船場盛進堂」からの発信に力を入れている。オリジナルプリント生地の販売とともに手芸作家の作品展やワークショップ、さらには伝統芸能の文化イベントにも取り組みながら、「繊維の街・船場」の地域再生を目指す。

 1926年に創業した本社地に残る自社ビルをリノベーションし、今年5月にオープンした。約92平方メートルの敷地に地上3階、地下1階の建物で、1階にギャラリーとカフェを併設。大きなガラス窓の明るいゆったりとした空間で、テキスタイルを眺めながらお茶が楽しめる。また、地下1階も戦時中の防空壕を改装した特設ギャラリーとなっている。

 2階はテキスタイルショップとワークショップのスペースがあり、常時1050マークの生地を揃えてカット販売するほか、各種ミシンも4台備えている。3階は企画オフィスがある。

 施設を運営するのは、関西のアーティストと製造業を結びつけるプロジェクト「アートで元気」。同施設をデザイナーやクリエイターの発信の場に位置づけ、額装アーティストの作品展やカルトナージュの展示販売、手作りグッズ教室などの実施に取り組んできた。「関西芸能の発信のスペースにも生かしたい」(津村長利アートで元気代表)とし、ギャラリーで上方落語の会も開いた。

 国内テキスタイル産地の縮小傾向が強まる中、松尾捺染では「本業のBtoB(企業間取引)を維持するためにもBtoC(企業対消費者取引)事業の構築が必要」(松尾治社長)として百貨店催事販売に参加し、今年からネット販売も始めた。催事やネットで「実店舗の要望が多い」ことに加え、「かつては人通りの多かった船場かいわいに、人の流れが取り戻せれば」と考え、ギャラリーを開設した。

1階は明るいゆったりとした空間でテキスタイルを眺めながらお茶が楽しめる


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