美容ディーラー大手、きくや美粧堂(東京)の主催する「プライマリーセッション岡山-美容未来プロジェクト-」が5月20日、おかやま未来ホールで開催され、司会進行を務めさせて頂きました。横浜に次いで初の地方開催となった本イベントは、美容学生に美容師のクリエイティビティーや働くリアルを伝えるための企画。地元サロンがヘアショーとトークセッションを行い、約700人の美容学生が観覧しました。岡山での本格的なヘアショー開催は数年ぶりのこと。コロナ禍もあり、学生のほとんどはリアルなショーを見るのは初めての経験です。今回は、当イベントに携わる中で改めて感じた「地方都市にとっての美容師の重要性」について書きたいと思います。
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シーン支える美容師
私たちの発行する『プラグマガジン』は「ファッション・カルチャー誌」を標榜(ひょうぼう)していますが、地方で成立しづらいこのジャンルの雑誌を20年以上に及んで支えてくれたのが地元美容師の皆さんです。当誌では創刊からこれまで、彼ら彼女らがつくるクリエイティブなヘアスタイルを断続的に掲載してきました。
ファッションスナップを企画した際、掲載人数が多くなるのは必然的に美容師さんであり、私たちが主催するファッションイベントで来場者の多数を占めるのも美容師の皆さん。こうしたことからも、美容師は当誌にとって特にプライオリティーの高い職種であると言えます。また、地方では少数派と思われるファッションリテラシーを有した人が多く、私たちにとって「貴重な理解者」であり、「良き相談相手」でもあります。
全国の美容院の数はコンビニの4.5倍以上と言われており、理容店の数もコンビニの2倍以上。同業者による競争の激しい業界ですが、岡山では業界内の縦と横の強い連帯があり、当誌のファンダメンタル(基礎的諸条件)はこうした土壌にも助けられたように思います。
11年から数年にわたって開催された「OKAYAMA HAIR COLLECTION」は、そうした岡山の地域特性を顕著に示す例かも知れません。全国にあまり類のないこのイベントでは、「岡山にバックボーンをつくる」というコンセプトのもと、フォトコンペティションやヘアショーなどが行われていました。地元有志の美容師によって立ち上げられた実行委員会には店舗や年齢を超えて多くの人が集い、「オール・オカヤマ」を感じさせる熱気にあふれていたのを思い出します。近年ではこうした表立った動きこそありませんが、岡山の美容師さんたちのリレーションシップははた目からも健在です。
エッセンシャルな仕事
リアルに人と接する機会が減少する現代において、理美容院での時間は絶対的にコミュニケーションを要するまれな機会です。そこで交わされる雑談ひとつにしても、その影響力は小さくありません。
地元美容師の感性や技術が、これまで以上に地域をエンパワーメントするのではないか。司会の合間、舞台袖からステージと客席を見ながらそんなことを考えていました。