74年に立ち上げられたライブハウス「ペパーランド」(岡山市)が今年で50周年を迎えました。立ち上げたのは、写真家、前衛映像作家、音楽評論家、美術展企画など、長年にわたって脱領域的かつ学際的な活動を続けてきた地元カルチャーシーンの重鎮でもある能勢伊勢雄氏。日本にまだライブハウスという概念もなかった時代に、都会に先駆け地方・岡山で生まれた先鋭的な場所でした。最も歴史あるライブハウスの一つとして、今なお全国にその存在感を示しています。今回は、50周年企画の一環で5月5日に開催されたイベント「PSYCHIC LEFT」へ参加した感想と共にペパーランドを紹介します。
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「ヤバい」ものを目撃
同イベントは、現代美術家の石川雷太氏と真言宗僧侶の羅入さんが主宰する「儀式」を岡山で初開催するもの。鉄板や工業用スプリングなどの打撃音・摩擦音をライブミックスするインダストリアル・ノイズ・ユニット「Erehwon」のライブ、密教系芸術集団「混沌の首」による供養舞い、動く瞑想(めいそう)、鐘や太鼓を打ち鳴らしながら激しく踊る現代の踊り念仏のようなパフォーマンスを鑑賞しました。
社会や政治、生と死、我々の精神性にまで強いメッセージを訴えかける圧巻の表現は、見る者によってはカルト的な要素もはらんだ危険なものを見せられている感覚に陥るかもしれません。過度にホワイト化されつつある現代において、良い意味で「ヤバい」ものを突きつけられたような体験でした。
ペパーランドは、音楽イベントだけで年間200組以上が出演するライブハウスであることに間違いはありません。ただし、音楽だけに限らず、詩の朗読や映画の上映、芝居の上演など、幅広くいろんな表現を受け止め、支え、紹介してきたメディアのような場所でもあります。表現によって「ライブ」(生きている)を実感できる、岡山のカルチャー最重要拠点です。
50周年の節目に企画された今回のイベントはその証左であるように感じました。バンドやイベントのポスターで埋め尽くされたペパーランドの扉や壁面の中でも、この日は「表現自由」の文字がひときわ印象的に映った気がします。
存在意義ある場所
イベント終盤に行われた鼎談(ていだん)の最後に、能勢氏は以下のような要旨の話をされました。
「ペパーランドは家族経営です。家を、家族を失った人間は、『資本』によってそのままスムーズに『純粋な労働力』へと解体されてしまい、一人の交換可能な『労働者』を生み出す。そうはさせたくない。そのような思いから、今日お越しいただいている皆さんとも、そうした家族的なつながりを持っていくことが、これからの時代に必要だと思っています」
哲学者のユルゲン・ハーバーマスは、かつてホームベース(生活世界)とバトルフィールド(システム世界)という概念を提唱しました。能勢氏が家族と共に築き、守ってきた岡山のアンダーグラウンドとは、双方をデコンストラクションした第三の世界と言えるかもしれません。それは、殺伐とした現代社会において、これまで以上に存在意義を持つ場所になるはずです。