ベルリンにおけるオーガニック・ファーマーズ・マーケットの需要性(宮沢香奈)

2020/12/24 06:00 更新


緩やかなロックダウンから厳しい制限を設けることになったベルリン。そういった状況でも開催されるのがマーケット(市場)であり、スーパーマーケット同様に住民にとって”必要不可欠”なものである。ロックダウンにより、毎年盛大に開催されてきたクリスマスマーケットが中止され、フード系のイベントも減少している中、注目を集めていたのが”stadtfarm”主催によるオーガニック・ファーマーズ・マーケットだ。

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オフィシャルFBより

”stadtfarm”とは、都市部で可能なオーガニック農業を運営している会社であり、2017年に設立された。自社農場では、レタス、ハーブ、トマト、キュウリ、ほうれん草、バナナ、パッションフルーツなどを生産しており、”AquaTerraPonik”と呼ばれる自社養殖場を持ち、アフリカナマズの養殖などを行なっている。ベルリン市内にはいくつかの共同農園やプライベート農場が存在するが、テント栽培や魚の養殖まで行なっている本格的な会社は他に聞いたことがない。

そんな”stadtfarm”主催のオーガニック・ファーマーズ・マーケットが開催されるとのことで友人と訪れた。ベルリン市内の中心地から少し離れた工場地帯に位置する会場は、残念ながらロックダウンと気温の低さから客足は疎らだった。しかし、他では見ないベルリン産のクラフトビール、ビールの酵母を使って作ったパン、ナチュールワイン、新鮮なオーガニック野菜、魚、ケーキなどが販売されていた。値段はやはり通常より高いが、ここでしか買えないというこだわりを感じさせるセレクトが多かった。同行してくれた友人と共に、絶品のエッグタルトとオーガニックコーヒーで癒しのひと時を過ごすことが出来た。

”AquaTerraPonik”で養殖されたアフリカナマズも新鮮な状態で購入することが出来る。
ベルリンのPankowを拠点に生産されているクラフトビール”Q-Bier”は、ドイツビーツの定番ピルスナー、ペール・エール、レッド・ラガーを展開している。値段は小さいサイズの0.33mlボトルで1本3ユーロ。
オーガニック素材のみを使用したクッキー

ドイツにおけるオーガニック食材や製品の需要は、JETRO(日本貿易振興機構)の調査でも2014年頃からずっと増加傾向にあり、世界で2位となっている。さらに、興味深いのが、オーガニック専門媒体の”BioHandel”が発表したオーガニック小売店における2020年1~3月期の売上が上昇しており、ファーマーズ直営店に関しては前年比を30%以上越えている点である。コロナ禍により、外食や外出自粛をしている人たちがファーマーズ直営店のオンラインを利用していることが背景にあるという。


ドイツはオーガニック食品や製品が豊富で安く手に入れることができるが、通常の食品よりはどうしても高くなってしまう。コロナ禍で仕事を失った人も多く、暮らしが楽になった人の方が少ないのではないだろうか?そんな中で、オーガニック食品への需要が高まるということは健康を守ることへ意識が高まったからだろうか?私自身も免疫力を上げる食材を意識して食べたり、自宅でヨガをやったりと自然と健康を意識するようになった。

”stadtfarm”に限らず、オーガニック・ファーマーズ・マーケットは毎週ベルリン市内の様々な場所で開催されている。外へ出て、新鮮で質の高い食材を買い、自宅でおいしいものを作って食べるということがロックダウン中に出来る数少ない楽しみであり、ささやかな贅沢であるともいえる。

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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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