RPR SOUNDSYSTEMから知るミニマル最前線(宮沢香奈)

2019/02/26 06:00 更新


オーガナイザーのRAHA氏からRPR SOUNDSYSTEMが再び来日するという連絡をもらった。2017年の4月以来2年振りの来日となるけれど、あれからもう2年も経つのかと驚いてしまった。

1年半振りの一時帰国の際にかなり久しぶりに恵比寿のリキッドルームを訪れた。分かってはいたけれど、懐かしい顔ぶればかりで嬉しくなったのと同時に東京のパーティーはやっぱりオシャレな人が多いと実感した。場所柄、イベントの内容、決して安くはないチケットの値段も影響していると思うけれど、業界関係者や良い音を熟知している年齢層高めのクラブ好きが多かったのも個人的には居心地が良かった。

もちろん20代のフレッシュでエネルギッシュな客層も多く、帰国するまでは正直心配していた東京のクラブシーンの未来を垣間見れた気がした。2年前のパーティーの模様はこちらから見れるので是非チェックして欲しい。こうゆう後パブが残せるのも日本ならでは。


RPR SOUNDSYSTEMとは、ルーマニアのミニマルシーンを代表するRhadoo、Petre Inspirescu、Rareshの3人から成る名義であり、個別の活動も多忙な彼らが同名義でプレイすることは世界規模で見ても非常に少なく希少である。ダンスミュージック激戦区ヨーロッパにおいても彼らの人気は絶大であり、各都市の有数クラブやフェスからラブコールが鳴り止まない。スター街道を登り詰めるとコマーシャルになったり、タレント化してしまい音楽に真摯に取り組む時間がなくなってしまうアーティストもいる。しかし、彼らには一切それがない。それどころかメディアにもほとんど出ない、インタビューも受けない、アーティスト写真でさえ何年も同じものを使っている。リリースやギグの本数を限定し、完璧な状態で作品を作り、100%のプレイをすることに専念している。


どこまでもストイック、どこまでもアンダーグラウンド。それは彼らの音を聴けば納得するだろう。是非ともオープンからラストまでフロアーにいて、ひたすら音に耳を傾け、気持ちと身体を解放して自由に踊りながらブレイクの瞬間を待って欲しい。派手な演出などない、ひたすら左右のスピーカーから鳴り続ける少ない音数の中に、綿密に埋め込まれた壮大なドラマが待っている。

先述した通り、ヨーロッパはダンスミュージックの宝庫であり、激戦区でもある。私自身ベルリンを中心とするアンダーグラウンドシーンに感銘を受けて何年も追い続けているのだけど、ここ数年、西ヨーロッパにおいては飽和状態になっているように感じてしまうことがある。誤解のないように言っておきたいけれど、シーンは相変わらず最高潮の盛り上がりを見せている。このままずっと変わらず、上昇の一途を辿り続けることだろう。そこにはドイツのように国が支援している背景があることは否めないが、ヨーロッパの人々はダンスミュージックで踊って楽しむという概念を持って生まれてきたのではないかと思うほど。”踊ってはいけない国”なんていう泣きたくなるほど悲しいレッテルを貼られてしまった日本に生まれ育った自分からしたら羨ましい限りであるけれど、近年は完成され過ぎてしまってるように思える。

それよりも、どこにも媚びることなく、ひたすら独自のシーンを掘り続けているルーマニア、ポーランド、ウクライナ、ハンガリー、そして、アジア諸国のアンダーグラウンドを知りたいとウズウズしている。

まずは、3月30日の「RPR SOUNDSYSTEM」来日イベントで何か感じ取って欲しい。2階のロフトに出演するRyosuke、PI-GE、Fake Eyes Production(Live set)の3組のアーティストもそれぞれ全く違った音とスタイルで楽しませてくれるだろう。日本人アーティストのスキルとセンスは世界トップクラスであるとどこの国行っても感じる事実である。



RPR SOUNDSYSTEM (Rhadoo, Petre Inspirescu, Raresh) @LIQUIDROOM

現行の世界のシーンにおけるトップの一人であり同時に現在世界を席巻するルーマニアのシーンの事実上のボスであるRhadoo、卓越したプレイはもとよりその生み出される作品群が世界最高峰の評価を獲得している唯一無二のアーティストPetre Inspirescu、’14まで所属したCOCOONなどでのワールドワイドな活躍により3人の中でも特にメジャーシーンにおいても抜群の名声を確立しているRareshの3人によるスペシャルユニット。このRPR SOUNDSYSTEM名義で出演するイベントは、世界でも彼らによって選ばれたトップイベント・フェスのみで、年に数回しか実現する事はない。

‘07に設立したレーベル[a:rpia:r]は世界中のアンダーグラウンドシーンでカルト的な支持を集める。’13, ’14には、ミックスCDシリーズの世界のトップブランド『Fabric』に3人が立て続けに起用されるなど、不動の人気を誇るシーンのカリスマ的存在。近年においては年を追う毎にますますその人気と地位は高まり続けている。

宮沢香奈の過去のレポートはこちらから



長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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