ヴィンテージナイキに江戸文字を施した「花道」がベルリンでPOP UPを開催(宮沢香奈)

2024/11/25 06:00 更新NEW!


コロナ禍が過ぎてもしばらくの間、世界情勢や円安などの影響も重なり、日本からベルリンを訪れる人の数は激減したままだった。しかし、今年になると徐々に状況は変わり、もとから来独の多いアーティストやデザイナー、クリエイターなど多くの人が訪れるようになった。特に、東京発のファッションブランドのエキシビジョンやPOP UPは、ベルリンにいながら東京の最先端な情報を得られる貴重な機会となっている。

≫≫宮沢香奈の過去のレポートはこちらから


先週も「NOWHOW STUDIO」が運営するレンタルスペース兼ショップ「ATBR」にて開催されていた日本のドメスティックブランドのPOP UPに行かせてもらった。ヴィンテージのNIKEスウェットに花道という江戸文字をバックプリントし、手縫いのステッチで文字の輪郭を縁取ったリメイクが印象的な「花道」、ドレーピングによる立体的なシルエットが特徴的な「YES BECAUSE YES」のカラフルなブルゾンなど、ベルリン初披露のブランドが揃う。


「花道」のスウェットは洗う度に変化していく色味やプリントの落ち感が程良く、ナイキのヴィンテージスウェットをボディに起用するアイデアも秀逸。スウェット以外にもスタジャンやコースター、グローブなどを展開。

日本のブランドに触れる度に思うのは、質の良さ、縫製のキレイさ、細かいディテールにもこだわりを感じるデザイン、着用時のシルエットの美しさ、完璧なサイズ感だ。プライスも良心的に感じるのは円安の影響もあるかもしれないが、同等のクオリティーのアイテムをヨーロッパで探そうとしたらなかなか難しい。


日本に帰った途端、物欲が爆発するのはそんな理由からかもしれない。デザイナーによるこだわりのポイントを聞きながら、池尻大橋に店舗を構える居酒屋「銀皿」の店主特製いなり寿司とドイツビールを堪能し、より一層一時帰国したい欲が高まった。


「NOWHOW STUDIO」とは、演出も手掛ける振付家と熟練の革職人という全く異なるバックグラウンドを持つ2人の日本人によって2021年にベルリンにて設立。ブランド名は、“NOW”=「今」“HOW”=「どの様に」を意味し、上質で柔らかいラムレザーを使ったコンテンポラリーなデザインが特徴的なバッグブランドを手掛けている。彼らのアトリエに隣接するスペース「ATBR」では、ドメスティックブランドやインディペンデントブランド、アーティストに場所を提供し、POP UPストアとして不定期で開催しており、毎回興味深い作品に触れることができる。

今回は週末の2日間のみの開催となったが、「NOWHOW」と「花道」とのコラボレーションアイテムとして「伯林今何如花道銀皿」(=ベルリン NOWHOW 花道 銀皿)と、プリントされたユニークなデザインのロングスリーブが白と黒の2色展開で限定販売された。


「NOWHOW」の商品は、すべてオーダーメイドで生産され、ベルリンのアトリエで職人の手によってひとつひとつ丁寧に作られている。シンプルでタイムレスなデザインはトレンドに流されずに長年使用でき、どんな場面でも活躍しそうなアイテムが揃う。また、5年間の無料修理保証が付いており、作品を大切に使って欲しいという作り手の思いが伝わってくるサービスも良い。


ファッションにおいてもサステナビリティーが当たり前となり、スローファッションを推奨する動きが活発化する昨今だが、消費社会であることに変わりはない。安価なファストブランドを購入し、1シーズンで着なくなってしまうといった無駄な消費行動はとっくの昔にやめているが、ブランドの生産背景を熟知して購入しているとは到底言えない。たとえ高額だと感じてもシンプルなデザインで上質なアイテムを身に付けることこそが、本当の意味でのサステナブルであり、スローファッションと言えるだろう。

ベルリンという街にいるとついファッションを忘れそうになることがある。自宅を仕事場にしており、引き篭もって作業していることが多いせいもあるが、「NOWHOW」のように常にアンテナを張り、ファッション業界に長年身を置き、独自の発想や感性で物作りをしている人たちから刺激を受けることは自分にとって必要不可欠であると実感した。

■NOWHOW STUDIO
Büschingstraße 3, 10249 Berlin
https://nowhowstudio.com/
https://www.instagram.com/nowhowstudio_official/

≫≫宮沢香奈の過去のレポートはこちらから

長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



この記事に関連する記事