白い石造りの建築と美しい自然に囲まれたイビサ島サン・アントニを巡る旅(宮沢香奈)

2023/11/17 06:00 更新


光栄なことに自治体のPRから招待を頂き、スペイン・イビサ島サン・アントニ・デ・ポルトマニ(Sant Antoni De Portmany、以下、サン・アントニ)を訪れた。プレストリップ以外にプライベートでの滞在も含めて、9月末から10月初までの約1週間という短い滞在だったが、これまで経験したことのない贅沢で貴重な体験をさせてもらった。ここで全てを紹介するのは難しいので一部となってしまうが、サン・アントニの魅力を少しでも伝えることができたらと思う。

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まず、気候が素晴らしい。9月末でも昼間は30度近くまで気温が上がるが、適度な湿度と青く澄んだ空のおかけで心地良い。ハイシーズンも後半に差し掛かっているせいか、ツーリストの数は少なく、私にとってはそれがとても居心地よく感じられた。

食事やお酒を楽しみながら絶景のサンセットが見れるベストスポット「Hostal La Torre」

イビサ島と言えば、パーティーアイランドとして世界的に認知されており、ナイトスポット目当てに訪れる人々で溢れかえっているといったイメージだった。しかし、サン・アントニに関しては、近年ナイトスポットのイメージを払拭させるプロジェクトに力を入れている。透き通った海の水や絶景のサンセット、内陸のハイキングなど豊富な自然の魅力は実際に訪れないと知らないままだ。事実、大人のための高級リゾート地という印象を強く受けた。それほどまでに、町はキレイで落ち着きと余裕さえ感じさせる。ゴミが至るところに散乱していて、時に悪臭が漂うベルリンを見慣れてしまっているせいもあるが、日本よりクリーンと言っても過言ではない。


私が最も気に入ったのは、サン・アントニから車ですぐに行けるサンタ・アグネス・デ・コロナ(Santa Agnès de Corona)とサン・マテウ・ダルバルカ(Sant Mateu d’Albarca)という村。イビサの伝統的な白い石造りの家が真っ青な空と農地に映えてとても美しい。アーモンドやオリーブの木が生い茂り、放牧も見れる豊かな自然に囲まれる中にスタイリッシュなレストランやカフェがあり、村全体がどこを切り取ってもフォトジェニックだった。澄んだ空気とゆっくり流れる時間が地元の長野を思い出させ、住みたいと思ったほどだ。


農村地なのに洗練されていて、ずっといたくなる心地よさ
ロケーションも料理も素晴らしい一押しのレストラン「Ses Casetes」

地元住民の9割以上がカトリックというイビサ島には、各地域ごとに歴史的な教会がある。14世紀に建てられたサン・アントニ教会をはじめ、海賊から村人や物資を守り、戦うための要塞の役割を果たしていたというストーリーに非常に興味を持った。住宅同様に白い石造りの美しい建築が特徴的だが、窓が異様に小さく、一見窓とは分からないほどだ。これは、海賊が攻めてくる際に見張るためや銃で反撃するためにあえて小さく作られたとのこと。他にも入り口のドアは重厚で頑丈なかんぬきが設置されており、簡単には開かないようになっている。

サンタ・アグネス・デ・コロナ教会
サン・アントニ教会

他にも、イビサ島の歴史で興味を持ったのが、代々伝わる「ボール・パジェス」呼ばれる農民のダンスの意味を持つ伝統的な踊りとその衣装だ。サン・アントニでのプレストリップ最終日のディナーの時に生で観させてもらったが、男性がカスタネットを演奏しながら激しく動いたり、ジャンプしたりして女性の気を引き、その間に女性は男性の周りをくるくる回ったり、派手な動きはしない。


音楽は、ドラム、フルート、エスパーシー (剣のような金属製の打楽器)で奏でられ、リズムや踊り方がとてもユニーク。細かくて緻密なプリーツやギャザー、パフスリーブといったデザイン、刺繍やボタン、リボンなどのパーツも現在のメゾンブランドがインスピレーションを得ていてもおかしくないほど凝っていて素晴らしい。特に、女性が身に付けていたフィリグリー装飾が施されたネックレス、十字架、ガラスのメダイヨン、全部の指に付けたゴールド、もしくはシルバーの指輪などのジュエリーに惹かれたが、イビサの女性たちは現在においてもその伝統的なジュエリーを身に付けている習慣もステキだと思った。


現地語のカタルーニャ語では”イビサ”を”エイビッサ(Eivissa)”と呼び、地図にも記されている。言語だけでなく、様々な伝統文化や貴重な自然を守り続ける地元の人々と世界各地から訪れ、この島に魅了され、離れられなくなる人々が生み出す新たなカルチャーが融合された不思議な魅力を放つ場所だった。今度はお気に入りの村に滞在して、農家の暮らしを体験してみたい。

協力: Visit Sant Antoni

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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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