UTMF観戦記&出走記(杉江潤平)

2015/10/02 13:51 更新


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皆さん突然ですが、UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)というトレイルランニングレースをご存知ですか?

富士山麓を周回する日本初の100マイル(160キロ)レースで、静岡と山梨の2県11市町村をまたいで開催されています。

総距離はなんと168キロ! これを46時間以内で走りきらなければならない過酷なレースなんです。

9月25~27日にその第4回大会が行われ、我々、繊研新聞スポーツ班が取材をしてきました。第一報は既に9月29日付紙面にてご紹介しておりますが、ここでは記事でご紹介できなかった事柄をお伝えいたします。 


 
UTMFは美しい富士山を見ながら山道を走る世界有数のトレランレース ©NPO FUJI TRAIL RUNNERS CLUB

 

■外国人多し!

まずスタート会場の河口湖八木崎公園で驚いたのは、参加者に外国人の方が非常に多いことです。UTMFは前回3回大会から、世界のメジャートレイルレースのみが加盟できる「ウルトラ・トレイル ワールドツアー」のメンバーに選ばれ、国際色豊かな大会となりましたが、それにしても多い印象を持ちました。

特に、アジアの国・地域から参加されているグループが目立ち、会場内では中国語などが飛び交っていました。

 

 
ウルトラ・トレイル ワールドツアーに参加するポルトガル人女性ランナー(左)、香港から来た男性ランナーは、今回が初めての参加(中)、“走る民”として知られるメキシコのタラウマラ族のランナーも参加。古タイヤに革ひもを巻いただけのサンダル(ワラーチと言うそうです)で走ります(右) 


グループで参加する海外ランナーたち 


大歓声の中、レースが始まりました


■気持ち良い林間コース

レース開始後、取材班がまず向かったのは、林間コースです。選手が来る前にコースを少し歩いてみると、落ち葉と枯れ枝などでトレイルはふかふか。周りは背の高い木々に囲まれ、空気はとても澄んでいます。

当日はあいにくの雨でしたが、「こんな中を走ったらとっても気持ちよいだろうな~」と感慨にふけった次第です。

 

 
ふかふかのトレイルをランナーたちが疾走します  

 


■献身的なボランティア

UTMFでは関係する市町村や団体、企業から約1000人ものボランティアスタッフが集まり、大会運営を支えています。コース上に散らばる各エイドステーションでは、スタッフらの献身的なサポートにも目が留まりました。

最も標高の高い地点にあり、レース後半の要所となる富士山御殿場口新五合目「太郎坊」では、泥だらけになりながら疲労困憊でやってくるランナーたちをボランティアスタッフが割れんばかりの拍手と声援でお出迎え。御殿場名物の「みくりやそば」やフルーツ、菓子パンなどを振る舞い、温かくもてなしてしました。

UTMFを1回大会から特別協賛するゴールドウインは、約70人の社員がボランティアに参加。スタート地点の選手受付やコース誘導のスタッフなどをされていました。

同社では、スポーツを一番に考えるスポーツファーストという考え方を理念としており、この大会がスポーツファーストを体現したイベントだと考えているそうです。同社の社員には、UTMFをサポートするボランティア活動を通じてトレランの魅力を知り、大会にエントリーする社員もいるそうです。

 

 
ヘトヘトのランナーを笑顔とおいしそうな栄養食で迎えるボランティアスタッフ

 

■ランナーが神々しく

全工程の3/4ほどに位置する山中湖付近では、足を前に出すのもやっとというランナーも目立ってきます。しかし、疲労困憊の中、それでも前へ進み続けるランナーの姿が胸を打ちます。

エイドステーションからスタートしたある選手にカメラのレンズを向けると、よちよちとゆっくりした足どりで「もうこんなペースでしか走れないんですよ」と、苦笑いを浮かべながら走っていきました。

「自分には同じ行程を歩くだけでも難しいのに…」。そう考えると、走っている彼らが人の限界を超越した存在に感じ、神々しくも見えてきます。気付けば、移動するバスの中から走るランナーに「がんばれー!」と声援を送り、手を振る自分がいました。

 

 
「もうこんなペースでしか走れないんです…」と苦笑いしながらゆっくりと進むランナー(山中湖付近で)

 

■感動のゴール

UTMFのもう一つの魅力は、フィニッシュ地点で見られるドラマです。

会場では選手を支えたスタッフや家族が、長い旅を終えて帰ってきたランナーと一緒にゴールする光景が見られます。

完走の達成感から晴れ晴れしい表情を浮かべるランナーや、ようやくフィニッシュできた安堵感から涙を流す人まで様々です。持ち場を解放されたボランティアスタッフや観客は、そんな彼らに惜しみない拍手を贈ります。

ちなみにレース全体の完走率は悪天候もあり、UTMFが41.5%、半周レースのSTYは87.77%でした。UTMF女子5位でゴールした高島由佳子さんはゴール後、「雨で地面がぬかるみ、下り坂ではまともに走れず、特に夜は足元が見えず怖かった」とコメント。いかにハードなレースだったかが分かります…。

 

 
サポートスタッフや見守った家族と一緒にゴールするランナー 



★番外編・ファッションチェック! 

繊研新聞らしく、今回ランナースナップもしてきました!

全体的には、ランナーの成熟化・レースの高速化から、装備品や着用品は軽く、簡素になっています。こうした中、ファッション面で注目されたのは柄パンツ! 

ランニングウエアというと派手な色のものはあっても柄モノは少ないですよね。もっともあまりに柄ばかりのウエアだと目立って恥ずかしいし、着こなすには勇気もいります。

しかし、ショートパンツなどちょっとしたところにさりげなく柄を取り入れると1ポイントになって、おしゃれ度がアップします。ちなみに写真の花柄パンツは「パタゴニア」です。

 

 
柄パンをはくオシャレな女性ランナーたち。ジャケットなどトップは「ザ・ノース・フェイス」が目立ちました

 

次に目立ったのはハイソックススタイルです! これまで日本ではロングタイツに短めのランパンを合わせるスタイルが主流でしたが、ようやくハイソックスが浸透してきた印象です。ハイソックス着用者からは「膝から下に生地があったほうが走りが安定する」「足の運びがスムーズ」といった声が聞かれました。

 

 
欧米では既に広まっているハイソックススタイル

 

 一方で、ロングタイツの上にランパンをはかずに、そのまま走るランナーもいました! 走るたびにヒラヒラとゆれるランパンが煩わしく感じるのか、軽装にこだわるランナーが増えている印象です。特に中国やシンガポールなどアジアから来たランナーに多かったです。

 

 
軽装を好むランナーが増えています 


こちらのコンプレッションタイツはワコールの「CW-X」


■STY出走記

今回、繊研新聞の小堀記者が半周レース「STY」に初参加しました。以下、彼の手記です。

 

 
小堀記者

 

 「いつかは走りたい」という憧れを持ち続けて3年が経った。まさか自分がこの憧れのレースに出場することになるとは――。昨年までスポーツ分野の担当記者をしていたため、第1回大会から毎年足を運び取材はしていた。

 メーンレースであるUTMF(総距離約160キロ)を走るランナーのタフな肉体と精神力を目の当たりにして、何度も興奮を覚え、時には鳥肌が立った。たった少しの休憩だけで昼夜問わず走り、歩き続けるたくましい彼らの姿は、畏敬の念を抱かせるとともに「自分には到底できないな」と思わせる。

 しかし、「スポーツは見るよりやるもの」「いつかは必ず」と周囲に宣言せずとも、そんな思いは心の奥底にあった。息は上がり、苦しそうに走るランナーが時に見せるなんとも言えない晴れやかな表情も脳裏に焼きついていた。

 富士山麓の雄大で素晴らしい景色を見た時や、エイドステーションでサポートスタッフの方々からの声援を受けた時、そんな表情がパッと現れる。「その瞬間の気持ちを体感したい」とも思った。やると決めたら行動は早かった(珍しく)。まずはUTMFの半周コースSTYを目標に据えた。

 ちなみにUTMF、STYは参加資格がある。あらかじめ、決められたレースを完走して必要なポイントを取得しなければならない。装備を揃え、すぐに2レースに申し込んだ。結局、1年で4レースを走った(半分近くは歩いたが)。楽しかった。

 それぞれのレースはそれぞれの苦しさがあったが、それ以上の興奮と、完走した時の達成感を得て、そして仲間もできた。自分の肉体、精神力はいったいどこまで耐えられるのか挑戦する、いわばゲームのような感覚もあった。

 

 
いよいよスタート。緊張の瞬間…

 

9月26日、STYをとうとうランナーとして迎えることができた。あいにくの雨でトレイルはぬかるみ、上りも下りも神経の使うレースとなったが、都会では味わえない澄んだ空気と、神秘的に映る自然に囲まれ、心は十分洗われた。

 

 
霧がすごかった

 

ただし、レース展開そのものの自己評価は、ペース配分を完全に誤った。前半は比較的緩やかだったために突っ込み過ぎた。そんな力もないのに。後半に上りがキツくなったうえ、鍛えの足りない筋肉や関節が悲鳴を上げ始め、体も心も一気に重くなった。

 夜になると睡魔が襲い、初めての内臓疲労で吐き気をもよおし、エネルギー切れなのに胃に補給食が入らないという体験もした。終わってみれば、とにかく苦しいレースで、後半は意識が少し朦朧としながら、何度も「もうアカン、もうムリ、しんどい」とつぶやいた記憶がある。

 しかしその反動で、完走した瞬間の達成感、解放感はなんとも言えない。これまで出たことのあるレースよりも、はるかに距離も時間も長かっただけに、かつてない充実した感覚だった。これは体験した者にしかわからないのかもしれない。

 

 
美味だった御殿場みくりやそば

 

走るのがそもそも嫌い、苦手という人は周りにもたくさんいるが、トレイルランニングは走れる人だけが楽しめる狭い懐のスポーツではないと思っている。雄大な景色、野山を無邪気に駆け回れる楽しさもあるし、レースに出るとボランティアの皆さんのおもてなしが温かい。

 運動中の食事は格別だ。今の自分と向き合う貴重な時間にもなる。だから、歩いてもいいし、止まって一息ついたっていい。それは山に言って体感してもらいたい。色んな楽しみ方がある。一度はお勧めしたい。きっと損はない。

 

 
走りきれたのはボランティアの温かいサポートがあったからこそ


    



すぎえ・じゅんぺい 本社編集部所属。編集プロダクション勤務の後、03年に入社。大手アパレル、服飾雑貨メーカー、百貨店担当を経て、現在はスポーツ用品業界を取材。モットーは『高い専門性と低い腰』『何でも見てやろう』

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