先日、大原かおりさんを取材する機会がありました。大原さんと言えば、バラエティ番組でお馴染みですが、実は「オッティー」というワンちゃん専用の服ブランドを運営する経営者でもいらっしゃるんです。
来年でブランド設立10周年を迎えることから、思いきってインタビューを敢行。一報は既に「繊研新聞」でご紹介していますが、記事に載せきれなかった情報もありますので、当ブログで詳しくお伝えします!!(※今回は「米ポートランド探訪記」をお休みします…)
■街で「犬服の人」と…
大原さんと愛犬・銀次ちゃん
――ブランドを立ち上げてもう10年、ですか。
大原さん 最近は「『オッティー』の大原さんですよね?」「犬の人ですよね?」って街で言われるようになりました。自分がデザインした犬服を着せたワンちゃんを、道端で見ることもあります。こういうのはとても嬉しいですよね。
この10年でワンちゃんの頭数も増えているし、着せるものもファッショナブルになりました。そういう意味で高級な犬服のマーケットが広がっていると感じます。会社を経営する立場から見ると、需要が増えるとそれだけ作る枚数も増え、工場のロットが拡大するので、可愛いものを買いやすいお値段で作れるようになりました。
犬の洋服が広がったもう一つの理由として、「犬種の流行」も関係しています。例えばチワワやゴールデンレッドリバーは毛がさほど伸びませんが、現在頭数が一番多いプードルは毛がよく伸びるので、定期的なトリミングが必要。すると、カットのためにペットショップに行く回数が増え、ショップに並ぶワンちゃん用の服を見る機会も増えるんです。つまり、犬種のトレンドによって、犬の洋服の売り上げが変わってくるわけです。
――受注会はしないとか?
大原さん できるだけお客様が商品を欲しいと思ったキモチを叶えるようにしたいからです。だから、枚数を多めに作ります。お客様から問い合わせがあって、「ごめんないさい、ソールドアウトです」っていう言葉も言いたくない。むしろ「あります! あります!」って言えるようにしたいんです。どのサイズのどの商品の何色が何枚くらい出るだろうと予測したり、最終的に残ったらどうするか、対策を考えるのも楽しいですし。
何でも一人でやっています。デザインもして、枚数も考えて、工場とのやり取りもして、お客様への発送もして、請求書や納品書も作って、ブログもやって、ホームページの入れ込みもやって、雑誌の入稿もして……。在庫の状況も頭の中にだいたい入っています。だから、問い合わせに対するお店さんへの報告は早いと思います。
■知ったかも、背伸びもしない
商品は超小型犬やブルドック、ミニチュアダックス用など全8サイズ。
アイテムはTシャツ(平均価格4000~5000円)やパーカ(同5000円)、キャリーバッグ(同1万円)など
――何でも一人でやっているんですね!?
大原さん はじめはパソコンの電源の入れ方、文字の打ち方すら知りませんでした。エクセルではコピー&ペーストの方法すら分からず、同じ文字をひとつ一つわざわざ打ち込んでいたほど。でも、せざるを得なくなった時に人ってできるようになるものですね。もちろん、ミスはありますが、徐々に形になっていくようになっていきました。今では一人で海外に買い付けに行きますし、中国の工場とも一人で交渉しています。
――トラブルへの対応も一人で?
大原さん 最近あったのは、中国の縫製工場で起きたプリントの問題。同じ柄なのに、ある素材だけなかなか指示通りに上がってきません。「他の素材と同じようにどうしてできないの?」と理由をその工場に聞くと、「素材ごとにプリントをお願いする工場が違うから、当然、均一の出来にはならない」と言われました。
実はこうしたことは業界では当たり前だったのですが、私はあんなに大きな工場だからプリントも同じ工場でやっているのだろうと思っていました。実際はプリント専用の工場があるし、素材の混率や織り方によって生地の性質が異なりますから、その都度、別々の工場で作業をしていたのです。
毎回思うのは、人ってトラブルが起きたときに成長するんだな、って思います。だから、私は知ったぶりもしないし、背伸びもしたくない。変にカッコつけずに、バカでいられる自分で良かったと思います。
――大切なことですよね。
大原さん 最近感じるのは、ヤマの乗り越え方って一つじゃないな、ということ。例えば、発注した通りに工場から商品が上がってこない場合。相手とケンカをして勝ち負けをはっきりさせるより、「こちらがここまでするから、そちらでそこまでしてください」と、こちらが歩み寄る形で問題を解決するほうが、無駄なイラツキや時間を減らせるうえ、次につながる関係も築きやすいと分かってきました。
配送では、運送会社に頼むと期日までに間に合わないときは直接お宅へお持ちすることもあります。お客様と直接会って話す機会は大事にしたいですし。お金を稼ぐことより、小さなヤマでも大きなヤマでも乗り越えることが大事なのかな、って思っています。
■キティちゃんとコラボ
――今回、「ハロー・キティ」との協業(コラボレーション)が実現しましたね。
大原さん 実は5年前に一度コラボをしているので、今回が2回目です。小さい頃からキティちゃんは本当に大好きで、お人形もたくさん持っています。1回目のコラボの時に、小さい子なら誰もが読む「いちご新聞」に載せてもらった時は嬉しかった~!! それを見た日は、外で歩いていても興奮して自然とスキップが出たほど(笑)。
でも、自分の手で1からコラボレーションしたというのは今回が初めて。前回は指示書も何もかも全ての作業を、一緒に働いていたスタッフに任せきりで、税関で費用がいくらかかるのかも知りませんでしたし、サンプルを何回出してもらったのかも分かりません。だから、この5年間の成長を感じる取り組みと言えます。(ヒソヒソ声で)あと内緒ですが、生産枚数も前回より10倍くらい増えたんですよ。
「ハロー・キティ」とのコラボ商品「Otty+HELLO KITTYシリーズ」
――5年の間に「オッティー」がそれだけ広まったわけですね。
大原さん 前回はこちらが必死にPRをしていたんですが、おかげ様で、今回はお客様の方から問い合わせをしてきてくれます。ブロガーさんからブロガーさんに情報が渡り、「聞いたのですが、どこで買えますか?!」って、発売前から数多くいただきました。「それだけファンが増えたんだ~」と実感しましたけど、それ以上にキティちゃん人気のすごさも感じています。
■プロと組んで大きくしたい
――卸し先の数は?
大原さん ペットショップ中心に約30です。最近は、人間用のセレクトショップのお取り扱いも増えてきました。オッティーはワンちゃんとお揃いのストールなども作っていますから。
――今後のビジネスプランは?
大原さん 本心を言うと、現時点で私はガンバリMAX!! でも、オッティーはもっと大きくしたいブランド。でも、一人だけじゃ絶対にこれ以上すごく大きくはできません。ならば、もう一段階ステップアップしてくれる「プロ」と組んで、自分とオッティーの違った面を見てみたい。今はコツコツがんばっている感じですが、今以上を望むらなら、一人だけじゃ無理だと思っています。
――大きく、というと。
大原さん 卸先さんが増えることと、卸先を増やせるぶんだけの商品を、時間をかけずにスムーズに多く作れるようにすること、もっと多くの人に知ってもらうことです。
JFW-IFF(インターナショナル・ファッション・フェア:繊研新聞社主催の合同展示会)に出展しても、(自分のブースの)雰囲気作りの下手さを実感しています。(他の出展者を見ていると)雰囲気で洋服の価値は変わる、と感じます。これはブースだけではなくて、ショップもそうだし、ホームページも同じこと。お客様に見てもらって、カワイイって思ってもらえるようにするには、雰囲気作りは大事なのだな、と思っています。
取材は、大原さん自身がプロデュースを手掛けたペットグッズのセレクトショップ「キャラメルボックス代官山店」を借りて行いました
<ショップデータ>
キャラメルボックス代官山店
住所:東京都渋谷区猿楽町26-2 e-1F
電話:03-6809-0391
時間:11時~20時(火曜休)
JFW-IFFといえば、今履いているこの「MOON BOOT」(ムーンブーツ、スノーブーツのタウンユース版)はIFFの会場で見つけたもの。取り寄せて愛用しているのですが、(多くの愛犬家や知り合いが)皆「何それ?」「超カワイイ!」って言ってくれます。欲しいという人の代わりに代理店へ注文していたら、スゴイ数になってきたんで、ついに今年からオッティーのホームページで販売するようになりました!
愛犬家や芸能人の知り合いになんで人気かというと、寒い冬のお散歩やロケに重宝するから。このムーンブーツは軽くて、温かくて、しかも安い(税込み1万3650円~)。種類も多い優れものです。IFFはこんな出会いも作ってくれました。
●取材を終えて…
「日々、全力投球」「夢まっしぐら」。大原さんと出会ってそんな言葉が思い浮かびました。賑やかなバラエティ番組で見る、明るくおちゃらけた大原さんとは違い、直接話した印象は非常にまじめで誠実。ご自身も愛犬家というだけあって、「ワンちゃんと飼い主のために役立ちたい」という強い想いを感じました。街で愛犬にオッティーを着せている飼い主を見ると、「嬉しくてつい話しかけてしまうこともある」と言います。こうした大原さんの熱心な姿から、接する人の多くが彼女の応援団になっていくとか。そんな「周囲を巻き込んでいく力」も、彼女の強みなのでしょう。
すぎえ・じゅんぺい 本社編集部所属。編集プロダクション勤務の後、03年に入社。大手アパレル、服飾雑貨メーカー、百貨店担当を経て、現在はスポーツ用品業界を取材。モットーは『高い専門性と低い腰』『何でも見てやろう』