FBを元気にするIT・販売支援

2016/07/31 19:50 更新


現場での情報活用が企業を変える

アパレルでのモバイル端末の使い方

 煩雑な業務が山積みのアパレル企業の現場でもスマートフォンやタブレット端末が使われるようになり、情報のやり取りや共有は効率化されたようにみえる。しかし、電話やファクス、メールも含め、その経路は多岐にわたり情報量は大量になり、新しい煩雑さが生じている。これが整理され処理作業が効率化されて、初めて情報の本格活用が可能になる。現場で情報が生かされれば、企業全体が元気になる。そんな元気を作り出すソリューション・サービスを紹介する。

◆ネクスウェイ「店舗マティック」 店長の秘書のように業務改革支援

◆ターミナル「ターミナルオーダー」 ブランドとバイヤーの業務効率化

◆バニッシュ・スタンダード「スタッフスタート」 客注を店頭決済、EC在庫も活用

◆アベイル「KK・AIM」 スタッフ自ら考え行動する店づくり支援

さらに詳しい「店舗matic」事例紹介

繊研新聞が手がける販売スタッフ向け教育ツール(「SAPLi」)紹介

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◆ネクスウェイ「店舗マティック」 
店長の秘書のように業務改革支援


 ネクスウェイはコミュニケーション支援ソリューションの老舗。本部・店舗間のコミュニケーションツール「店舗マティック」は80社2万店で利用され、そのユーザーは15万人に上る。アパレル企業がその6割を占めるという。3カ月ごとのバージョンアップで機能を追加・強化しユーザビリティー高めている。その多彩な機能とノウハウが、業務課題の抽出とその解決を支援する。便利なツール導入からこれを活用した課題解決支援までのサービスが、口コミでアパレル企業に広がっている。

 店舗マティックは、本部・店舗間の情報を整理し情報処理業務を効率化、仕事の仕方も変えていく。人手不足の中、大きな負荷を抱える店長の業務効率化で特に効果が大きいようだ。「これ忘れていない?」とまるで個人秘書のように店長に教えてくれる。店舗側のトップ画面に「今日やるべき業務」が明示されるからだ。

 

今日やるべきことが一目で分かる(「店舗マティック」店舗側トップ画面)
今日やるべきことが一目で分かる(「店舗マティック」店舗側トップ画面)

 

 例えば、店舗間移動リストは一般にエクセルで全店配布され、店長はこれをプリントし自店に関わる項目を抜き出す。店舗マティックなら、エクセルを取り込み、店舗ごとに関連する項目を抜き出し配布することができる。店長は一目で何をすべきか分かる。

 一方、本部は「指示したことができていない」ことが一番の悩み。「店舗への情報が多過ぎて混乱している」ことは分かっても、課題を具体的には把握できない。このため、導入に当たってはまず、店舗にどんな負荷がかかっているか、導入企業と話し込む。店舗や本部でヒアリングし、実態を聞き、無駄なものを見つけ出す。1カ月分のメールを分析することもある。

 無駄な情報のやり取りが減るだけで、店舗業務は効率化される。次のステップでは、タイミングなどもっとよい情報の提供の仕方がみえてくるという。店舗に合わせて本部の仕事の仕方を変える、業務プロセスの見直しが始まる。ある企業は水曜日に店舗へマークダウンを指示していたが、木・金曜日の店舗作業負荷が大きかった。火曜日夕方の価格会議開催の結果だが、そのタイミングに合理的な根拠はなかったという。こんなことが見えてくる。

 さらに無駄がなくなると、現場視点の情報活用が始まる。「こうしたらよく売れる」といった店舗の声が出てくる。業務効率化が進むと、本業に関わる生のコミュニケーションができるようになる。このコミュニケーションを支援する、成功事例を共有するための社内ツイッターのようなアプリも提供している。「今、店舗スタッフが客にどんな体験、感動を提供するかが競争力を決める」。そこでは様々な情報を持ったスタッフが力を発揮する。 

 

さらに詳しい「店舗matic」事例紹介

繊研新聞が手がける販売スタッフ向け教育ツール(「SAPLi」)紹介


◆ターミナル「ターミナルオーダー」 
ブランドとバイヤーの業務効率化


 ターミナル(東京)の「ターミナルオーダー」は、ブランド・バイヤー双方の取引業務効率化の効果が大きく、導入ブランド・登録バイヤーを増やしている。新規取引先獲得のためのマーケティング支援のサービスも加え、さらに与信管理・請求代行、短期融資などのサービス提供の準備も進めている。業務効率化のツールから安全安心な環境を整えたマーケットプレイスへの進化を目指す取り組みだ。

 ターミナルオーダーは、展示会・受発注業務をデジタル化・ペーパーレス化し効率化を支援するクラウドサービス。14年9月にサービス提供を始め、180ブランドが導入し5200人以上のバイヤーが登録している。多くがメールやファクスのやり取りによっている受発注業務をデジタル化しターミナルオーダー上で済ませることで、多くの手作業を省きミスをなくすことができる。

 

「ターミナルオーダー」展示会管理画面
「ターミナルオーダー」展示会管理画面

 

 展示会後、1、2日あるいは1週間かかることもある集計業務もほとんど一瞬で終わる。基幹システムとのデータ連携もサポートし、工場への発注業務なども効率化できる。バイヤーにも商品情報や在庫状況が時間を選ばず確認できるなどの利便性が浸透してきた。

 管理・分析機能をモバイル端末から利用すれば仕事のスタイルを変えられる。サービス提供を始めて2年近く、導入企業に取引データが蓄積されつつあり、本格的にデータの活用が始まれば、事業改革にもつながる。このため、利用企業の業務フローや業務指標に合わせてデータを抽出し分析できる仕組みもある。「様々な機能を使い尽くしてデータを活用しPDCAを回して欲しい」という。

 さらに幅広い活用を促すため、フィンテックやマーケティングサービスも事業化の準備を進めている。第三者割当増資で1億円を調達したのもそのため。与信管理、請求・回収代行などサービス提供に向け金融機関との話し合いを進めており、次いで短期融資もスタートさせる。既にターミナルオーダー英語版をリリースしており決済関連のサービスが整備されれば、海外バイヤーの獲得も加速するとみている。

 必要なロジスティクスもパートナーとの提携で整備する考えだ。それぞれ段階的に準備を進めており「金融回りのサービス」は年度内の提供を目指している。これら金融サービスは、蓄積したデータの活用で可能になるもので、同様に蓄積した取引データを活用したマーケティングサービスも事業化する考えだ。

 国内ブランドのオンラインPRのためのマーケティングチームを設ける。オフラインでの海外展開支援もする。将来は、ファッション卸に関する全ての分野で支援サービスを提供していく考えだ。

◆バニッシュ・スタンダード「スタッフスタート」 
客注を店頭決済、EC在庫も活用

 ECコンサルティング・システム開発のバニッシュ・スタンダード(東京)は、モバイル端末用業務支援アプリケーション「スタッフスタート」で客注機能の販売を開始した。「店舗が元気でなければ、EC売り上げも伸びない」(小野里寧晃社長)と考え、店頭に負荷のかかる業務をEC機能を使って軽減するシステムを提供する。

 このアプリはこれまでも、スタッフのコーディネート写真をモバイル端末のみで、簡単に作成する機能を提供している。新機能も店頭では処理が煩雑で時間がかかる「客注」業務を軽減する。特徴は、すべてをアプリ内で処理し、ECの在庫・商品データを活用、店頭レジで決済する点だ。

 これらが組み合わさることで、他店への連絡や移動のための書類作成など煩雑で時間のかかる作業をなくし処理時間を短縮する。客を待たせない、ミスが削減できる、売り上げを逃さないなど、新しい買い物体験の提供やスタッフの負担軽減のメリットがある。店頭決済のため、売り上げは店舗につき、店やスタッフの評価につながり、導入に関して、ディベロッパーの抵抗感も少ない。

 

IT特集バニッシュ図 (1)

 

 スタッフスタートの客注の業務フローは図の通り。店頭で欠品し、客注が発生した場合、ECの商品・在庫データで当該商品を引き当てる。端末に表示された商品バーコードを店舗レジのリーダーで読み取れば、レジで決済できる。自社アプリの既存会員であれば、会員バーコードや会員ナンバーで個人情報を打ち込まずに、内容確認だけで、配送処理も可能だ。これらの条件が揃えば、最短数分で客注処理が完了する。

 会員でなければ、その場で入会を促すことで新規会員獲得につながり、会員にならなくても配送先を端末に直接入力してもらうことで、客注処理が完了する。配送先は店舗も個人宅も選べる。

 同社はEC支援を業務とするが「ブランドや店頭での体験が価値を創る。ここが元気になれば、ECも売れるようになる。ECが持つ商品、在庫、顧客などのデータを使って店頭業務の支援もしていく」という。

◆アベイル「KK・AIM」 
スタッフ自ら考え行動する店づくり支援


 アベイルが店舗とそのスタッフに焦点を当てた店舗・本部コミュニケーションシステムの提供を始める。

 小谷理実社長は「これまでは強い本部を支援してきた」が「消費者に最も近い店舗からの情報発信がこれからのアパレル小売業の成長を支える」という。店舗発の情報共有を重視し、スタッフ自ら考え行動する店舗づくり支援のサービスが始まる。

 「KK・AIM(アベイル・インプルーブメント・メソッド・フォー・リテイル)」は、店舗・本部間の情報共有ツール、情報閲覧をチェックする体制、コンサルティング――を低価格なセットで提供する。アパレル企業の関心は高く、有力セレクトショップや大手アパレルなど3社で導入が決まり、9月にサービス提供が始まる。異業種の小売業からも引き合いがあるという。

 情報共有は本部からの業務指示に加え、店舗側からVMD画像、追加・売価変更・商品引き下げなどの要望、情報提供の要請、客の声といった様々な情報がアップできる。

 一方で、基幹システムから売り上げ・在庫データなどが公開テーブルに簡単に書き込め、店舗は自店、他店ともにリアルなデータで状況がつかめる。MD支援ソフト「KKMD」の分析機能を使ったアラート表示もある。

 また「店の売り上げは何番目」「もっと頑張ろう」などの「ささやき」も表示。スタッフが自店を客観評価する支援をしてくれる。

 アベイルは、情報を有効活用できるよう店舗スタッフのアクセス履歴を管理するチームを作り、要望に応じ専門コンサルタントも派遣する。



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