数日前、代官山の人気書店で目にした1冊の写真集『Frida Kahlo: Fashion as the Art of Being /ファッションアイコンとしてのフリーダ・カーロ』。世界の名だたるアーティストやファッションデザイナーに影響を与えているメキシコが生んだ画家、フリーダ。
彼女の独特な審美眼が生むスタイルは、Valentinoやジャンポール・ゴルチエ、また先日レジオンドヌール勲章シュバリエを授章された高田賢三創設によるブランド「KENZO」ほか、さまざまなブランドのコレクションのアイデアソースとして、また彼女の作品を所有しているというマドンナに至るまで、その見事な顔ぶれに思わずため息がこぼれる。
そこで今回のCINEMATIC JOURNEYは、「フリーダがナビするシネマな旅」をテーマに、まずはメキシコへ✈✈✈
昨夏、当コラムでもご紹介したドキュメンタリー映画『フリーダ・カーロの遺品―石内都、織るように』。
その出演者である写真家、石内は世界的注目を集めた『ひろしま』をはじめ『絹の夢』など、布や記憶にまつわる情熱あふれる作品を発表し、写真界のノーベル賞と称される「ハッセルブラッド国際写真賞」を受賞している。
そんな彼女の展覧会『Frida is』が現在、資生堂ギャラリーで8月21日まで開催中だ。
前述の映画をご覧になった方も、また初めて観賞される方も、それぞれの想いと共に、作家のまなざしがとらえた一人の女性、フリーダが生きた証の数々を、目にすることのできる日本で初の本格的な発表の場となっている。
映画の舞台にもなっているメキシコならではの明暗のブレンドが特徴の壁の色と作品のマッチングが、訪れる者を温かく迎えてくれるかのよう。
そして実は彼女も、フリーダに影響を受けた一人のようだということが、冒頭の写真集から知ることとなった。エイミー・ワインハウス!
折しも、彼女が27歳の生涯の中で、アーティストとして活躍した「before/after」的ドキュメンタリー映画『AMY エイミー』の日本公開というタイミングもまた絶妙。
確かにジャンポール・ゴルチエ、マドンナという流れからいっても、「なるほどねぇ~」とうなづけるのだが…
参考までに、本作のために用意された資料を拝見していると、こんな記述を発見!
マドンナの舞台衣装などを手掛けてきたことで知られるゴルチエの2012年春夏コレクションは、エイミーへのトリビュートを捧げたもの
そして次のようなコメントも…
エイミー・ワインハウスは、真のファッション・アイコンであり、飛びぬけた個性の持ち主! ファッションでも、音楽でも、数々の偉大な人物からの影響を融合させ、自分のスタイル創り出していた
2011年7月23日、人生の幕を閉じた彼女だが、その歌声に魅了される人々の数はこれからも決して減ることはないと思う。
そして数多くの秘話が盛り込まれた本作の鑑賞後、耳にするソングコレクションは、より一層深みを増して耳に届くのではないだろうか★
『AMY エイミー』
7月16日より角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、角川シネマ新宿ほか全国ロードショー
© 2015 Universal Music Operations Limited.
ここで、「フリーダ・カーロ×エイミー・ワインハウス=ドイツワインの新風」の話題を少し。
そのココロは?
フリーダの父方のルーツはドイツにあったから!
ということで、「ドイツと言えばビール」というのがお決まりのイメージなのですが、実は近年、「ベルリン・ファッション・ウィーク」などでもプロモーション展開をし、注目を集めているワインの若手醸造家団体「Generation Riesling」をご存じですか?今日はほんのさわり程度を、ご紹介させていただきたく。
今年10周年のバースデーパーティーを開催した彼らは、「35歳未満。モダンで、高品質、ダイナミックなドイツのワイン造りの旗手」。総勢530人以上のメンバーから成る、世界最大の若手醸造家グループ。
現在30%が女性だそうです。が、徐々にこの数字がアップする可能性があるような予感がするのは、私だけではないような・・・?
そこで、今回のCINEMATIC JOURNEY7「フリーダがナビするシネマな旅」の〆は、「音楽の国ドイツ」へとtake off✈✈✈
このところ『帰ってきたヒトラー』をはじめ日本で公開されるドイツ映画が、ちょっとした話題を呼んでいる中、本作『生きうつしのプリマ』もまた、「音楽の国ドイツ」らしいオペラ、そしてジャズも加わり、よりコンテンポラリーなジャーマン・カルチャーな味わいに仕上がっている。
劇中に登場する、リモワやボッテガ・ヴェネタなど、スタイリッシュさもまた魅力的。ちなみに、「母と生き写しの、見ず知らずの姉妹との対面」という本作のインスピレーションとなったのは、監督兼脚本を手掛けたマルガレーテ・フォン・トロッタ自身の過去の出来事によるとか。
ところで、前述の作品にも出演していたヒロイン役のカッチャ・リーマンと、共演の母とプリマドンナの二役を好演したバルバラ・スコヴァ。
彼女たちは女優のみならず、歌手としても活躍している2つの職業のプロ。ですから、実際に歌っているのはもちろん本人というわけです。
監督いわく(資料より抜粋)
2人にとって歌手としての「記念碑」的な作品にしたかった。これはある意味、2人に捧げるおマージなのです
そして監督もまた女優として30年以上のキャリアを誇り、本作は監督2作目となる。そんな彼女たちのライフスタイルも、女性として未来への可能性をナビしてくれたようなシネマの旅かもしれない。
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中