❝引いては打ち寄せる「時の波」に飲まれることなく、共存する術とは?❞
そんな気持ちを抱く方も多々おいでかと思われる昨今。
2020後半戦初の「CINEMATIC JOURNEY」は、7月7日の七夕にかけて「星に願いを!」ではなく、「福(=服)に願いを!」をテーマに、新作に登場する主人公たちの「心の窓」をのぞき見しつつ、「福」を共に分かち合いたく!
まずは現在公開中の『カセットテープ・ダイアリーズ』から。
おそらく誰しも一度くらいは、憧れのスターを真似て「なりきりファッション!」まで、ヒートアップしなくとも「誰々風のスタイリングにチャレンジ!」なんていう経験があるのでは?
本作の主人公、ジャベド少年もそうした類の一人。
物語の舞台はイギリスの小さな町。パキスタン系家族に生まれ、独自のしきたりがある日々の中で、楽しみの一つと言えば、愛用の「SONYウォークマン」でお気に入りの音楽を聴くこと。
そんな彼の人生に衝撃の出会いが訪れる。
それは「ボス」という呼び名で世界的に活躍するロック界のスーパースター、ブルース・スプリングスティーン(以下、略称「ボス」で)の名アルバム(「ボーン・イン・ザ・USA」と「闇に吠える街」)が収められたカセットテープだった…
ボスの歌詞に込められたメッセージ性が香る楽曲に夢と勇気を与えられ、まずは服から始まった「新しいライフスタイル」プロジェクト。折しもこのコロナ禍を生きる私たちもまた、エナジーチャージ気分を味わえそう。
スクリーンを鮮やかに彩る、80年代の「マドンナ」や当時のポップ・ミュージックシーンをイメージしたファッションやカルチャーなどが散りばめられ、ある世代に懐かしく、そして他の世代には斬新に映るのではないかと。
だからこそ、未発表音源3曲を含む全12曲という前代未聞のボスの楽曲数を誇る本作オリジナル・サウンドトラックも、アフターシネマ(もちろんビフォーでも)にプラスしたくなるだろう。
とりわけエンドタイトルの『アイル・スタンド・バイ・ユー』は、ボスの3人の子どもたちへの思いを秘めつつも、ビンテージワインのごとく10年近い熟成期間を経て、本邦初公開となった感動作。
なお、原作&脚本担当のサルフラズ・マンズールの実話に基づくストーリーと知れば、各自各様の未来により一層、希望を託したくなるに違いない。
TOHOシネマズ シャンテ 他全国公開中
配給:ポニーキャニオン
©BIF Bruce Limited 2019
「福(=服)に願いを!」をテーマに巡る今回の「CINEMATIC JOURNEY」。
続いて向かう先は、北欧、スウェーデンで「初登場No.1」に輝いたヒット作『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』。
夫と2人暮らしの専業主婦歴40年のヒロイン、ブリット=マリー63歳。
生涯現役主婦かと思いきや、ある日突然、人生が180度異なる方向へと歩み出す一大事が!
スーツケース1つ持参し家を出た後、彼女の新天地となったのは、小さな村のユースセンターでの管理人業務と子供サッカーチームのコーチという、何れも未経験の職務だった。
ヒロインを表情豊かに演じるのは、『スター・ウォーズ』エピソード1&2でアナキンの母役を演じ、世界的に知名度がアップした、スウェーデンの国民的女優ペルニラ・アウグスト。
そして美しき監督は、当コラムでも紹介した『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』のヒロイン役など、女優としてのキャリアも長いツヴァ・ノヴォトニー。
さて仏頂面にエプロンがトレードマークのヒロインが一変し、子供たちと同じサッカーチームのユニフォームをまとうに至るまで、さまざまな出会いや経験を重ねる中で和らいでいく彼女の表情に比例して変化する、「服」に見るスタイルや色彩、とりわけ「ピンク色」に対するトーンの変遷は、彼女の「福服度」を映し出しているかのようでもある。
本作資料のラストにも記されていた監督のコメントを引用するなら
❝本作の根幹、そしてテーマは一言で表すと「勇気」なのです❞
というわけで主演と監督、2人のスウェーデン女性の才能の共演も魅力の一つと言えそうだ。
『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』
7月17日(金)より、新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
配給:松竹
ⒸAB Svensk Filmindustri, All rights reserved
最後に少しばかり、前述のヒロインに通じる「ピンク色」にまつわるロマンティックな話題を!
2008年7月に誕生して以来、その徹底したこだわりとチャレンジ精神に感動することしばしばの国産オーガニックコスメ&フーズのブランド「アムリターラ」。
代表を務める勝田小百合さんによる新作発表時のプレスコンファレンスでは、興味深いコメントを多々耳にする。例えば昨年末の「幸せホルモンが開花するオーガニック植物学」をテーマに開催された際には、新作の原料となる日本原種のバラ「ハマナス」(下記の写真)に関する話題の中で、
❝ピンク色は見ているだけでも女性ホルモンがアップします!❞
と熱く語られた。ちなみに時は今まさに開花時期なのだそう。ハマナスが咲き誇る畑へと、ヴァーチャルトリップを楽しんでみては⁇
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中