利便性とEC:未来のマタニティ(WGSN)

2018/02/28 11:00 更新


WGSN小売分析プラットフォームInstockによると、イギリスではマタニティウェアの新商品の数が前年比11.5%増を示した。

EMEA地域(ヨーロッパ、中東、アフリカ)のマタニティ市場は2019年までに50億ドルに到達する(情報ソース:Technario)と見込まれている。この市場において次なるフロンティアはECビジネスだ。マタニティ/ベビー用品の Mothercareを筆頭に、アパレルリテーラーはECサイトを通してマタニティ用品の取り扱いを拡大している。

マタニティ市場におけるキーメッセージを探ってみよう。


物理的なニーズを考えるよりも、母親になる女性のライフスタイルに寄り添う

初産の平均年齢は1975年以来上昇傾向を続けている。国家統計局によると2016年には28.8歳に達したそうだ。年齢が上がれば自由に使えるお金も増える。

マタニティリテーラーは、顧客を取り込むために、より良い提案をする必要がある。マタニティウェアのコレクションを取り揃えるだけでは不十分だ。モノよりも消費者のライフスタイルに寄り添うことが重要である。消費者は体験やストーリーテリングを求めている。これはファッション市場全体における変化である。

アメリカのマタニティ専門店Hatchは高級マタニティウェアに加え、新しく母親になる女性のことを考えたビューティー&妊娠ケア製品(妊娠線予防、つわり緩和など)を販売する。高齢出産の女性もターゲットに含め、妊娠に対する包括的なアプローチを取るので高い価格設定も納得がいく。

この戦略はデパートのように様々なカテゴリーを取り扱うリテーラーに適している。実店舗でのサービスを充実させ、EC企業との差別化を図ることができる。アパレル、ビューティー、ベビー用品など、幅広い製品展開により異なる要素を組み合わせ、ライフスタイルに寄り添うマーケティングを打ち出して消費者に語りかけ、ワンストップショッピングとしてアピールする。


トータルな体験でコミュニティを構築

ネット販売のみのリテーラーは、包括的な視点から妊娠を考えると良いだろう。顧客との接点を持つ実店舗がないため、妊娠の専門家から学んでオーセンティックなオンラインコミュニティを構築し、妊娠中の女性のニーズに応える。

リテーラーは実際の体験に基づいたブログを発信したり、サイト上でマタニティウェアのスタイリングを紹介したりする。これにより、コメントが投稿され、コミュニティが作られる。インクルーシブネスを重視し、気軽に参加できて互いにサポートするコミュニティを築き、妊娠に関する全てのニーズに対応するブランドを目指す。


利便性は必要不可欠であり、ECは利便性向上を図る必要がある

妊娠中の女性は利便性を求めている。EC企業に利便性は欠かせない。しかし、便利な配達サービスだけが利便性向上の手段ではない。簡単な返品システム、サービスのトライアル、パーソナライゼーションも成功のカギを握る。

リテーラーは購入品から顧客の好み(トレンド系、ベーシック系、両方のミックスなど)を把握して、パーソナライズされた包装で製品を届けると良い。また、購入するようにプレッシャーを与えてはいけない。メンズウェア専門のEnclothedASOSによるTry before you Buy(買う前のお試し)オプションがその良い例だ。

利用者は購入を決める前に、家にいながらサイズとスタイルを試すことができる。このようなサービスはオシャレに意欲的な若い母親層にリーチする。Collect+などのシームレスな配達サービスを加えれば、マタニティ専門店やECサイトにとってさらなる利益拡大につながるだろう。


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