今回は作家が作る服や服飾雑貨、ビンテージ雑貨を扱う「NEWOLDSTOCK」(ニューオールドストック)を紹介します。森岡聡介さん、蔵野由紀子さん夫妻が、12年に東京・蔵前で開店し、ビルの取り壊しに伴って、24年4月に早稲田に移転しました。店を運営する姿勢を聞きました。
横並びの関係
ニューオールドストックには、共感したり分かり合えたり、同じものを愛せる人たちが集います。2人が「応援したいと思える作家が作るもの」を取り揃え、お客様に伝えるコミュニケーションを惜しみません。
「特に個人作家が作るものは、無機質に作られるのではないし、その人自身が魅力的じゃないとお客様に薦められない」と森岡さん。店と作家とお客様が横並びの関係でありたいと考えています。「買うまでのプロセスも大事に思ってくれる人とつながりたいんです」と蔵野さん。その店づくりには、自分たちがデザイナーとして物作りをし、商品を生み出すこと、展示会に出展すること、卸売りをした経験が根底にあります。商品の製作の背景や作家の気持ちや表現を熱量を持って伝えます。
また、お客さんからの正直な意見や自分たちの感覚や意見も作家と共有します。作家がそれを受け止めて、つくるものに「化学変化が起きている感覚」があるそうです。オーダー会などを行ってきたレディスウェア「タクター」の山本さんは、商品制作の背景も伝えてくれ、意見を率直に言ってもらえることで、次のヒントを得るパートナーだと感じているそうです。
ライブの雰囲気
顧客は9割が女性で、一人で来店される方が多いです。長い時間滞在する方も珍しくありません。居合わせたお客様同士も会話が生まれる雰囲気があります。「かわいいよね!」と試着しながら声を掛け合い、会話が弾んで、その場の空気が盛り上がっていく様子は「ライブのよう」と蔵野さんはいいます。
新店舗では、コロナ禍で休止していたワークショップを再開します。手仕事や物作りの楽しさも大変さも体験してもらい、物に対しての考え方をアップデートする機会になればと企画しています。
スタッフを増やさず、あえて小さい規模で運営し、手の届く範囲でその時その時のやりたいことを実現してきました。ソーシャルメディアやメールで手軽に連絡でき、ECでも購入できる時代に、店に足を運んでもらい、じかに商品を見て、じかに会話することの意義を改めて感じます。
■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。