繊研新聞社による「第7回ファッションECアワード」は昨年に続き、コンテンツが充実し、実店舗との連携にもたけたサイトがエクセレント賞に輝いた。フォーカス賞は、地方発ながらSNS活用などで多くのファンを持つサイトや、注目の高まる二次流通で実績を上げるサイトが受賞。サポート賞は、UGC(ユーザー生成コンテンツ)活用や顧客体験向上につながるサービスが支持を集めた。22年に殿堂入りした「スタッフスタート」が今回も多く得票していることや、受賞サイトの傾向からも販売スタッフのオンラインでの活躍がOMO(オンラインとオフラインの融合)推進に貢献している様子が浮き彫りとなった。これらの賞は、ファッション企業やITベンダー企業合計約100社からのアンケートをもとに選出した。
エクセレント賞
「ドットエスティ」(アダストリア) オープンモール化、UIも注目
「ドットエスティ」(アダストリア)は、4年連続受賞となった。今年はオリジナルブランド主力の自社ECでありながら、オープンモール化し、他社の商品も販売する先進性を評価する声が多かった。多数のブランドを扱いつつも商品が探しやすいUIの質を指摘するコメントも多数集まった。OMO型店舗「ドットエスティストア」を軸とした施策にも磨きをかけている。従業員がコーディネートなどを発信する「スタッフボード」で人気のスタッフとファンが触れ合う店舗イベントを増やすなど、多角的な運営が強みだ。
「オンワード・クローゼット」(オンワードデジタルラボ) OMO型店舗との連携に評価
「オンワード・クローゼット」(オンワードデジタルラボ)は初受賞。OMOの推進が支持された。複数ブランドを揃えるOMO型店舗「オンワード・クローゼットセレクト」の拡大と、自社サイトから商品を取り寄せて試着できる「クリック&トライ」の導入が進み、実績が出ている。そのほか、オウンドメディア「オンワード・クローゼット・マグ」のコンテンツの質の高さと豊富さ、購買層に合わせた分かりやすいUI(ユーザーインターフェース)なども評価ポイントとなった。
「パルクローゼット」(パル) コンテンツと話題のサービス
「パルクローゼット」(パル)は、昨年のフォーカス賞からランクアップし初のエクセレント賞受賞。得票もぐっと増え、「商品情報・スタッフコンテンツの充実度が非常に高い」と、コンテンツの豊富さを評価するコメントが多かったほか、スタッフのSNS投稿業務や評価制度など、サイクルを回す仕組み作りの優秀さを指摘する声も上がった。また、インフルエンサーのAIチャットボットなど、話題性のある先進的なサービスを積極的に取り入れる姿勢も「伸び代が大きい」「学ぶべき要素が多い」と評価された。
■エクセレント賞=先進性があり、総合的に優秀と思うECサイトを各企業が推薦
フォーカス賞
「古着屋JAM」(JAMトレーディング) ECでも〝掘り出し物〟
「古着屋JAM」(JAMトレーディング)は、一点物の古着をECで販売するノウハウを評価する声が多かった。細かくカテゴリー分けした販売ページで、店舗さながらに掘り出し物を探す体験ができるとのコメントもある。同社の強みはささげ(撮影、採寸、原稿作成)の効率性。メジャー採寸した数値をそのままデータとして入力できる機器の活用などDX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化が進んでいる。
「アークネッツ」(リストリクト) 親しみ、接客感で魅了
初受賞となる「アークネッツ」(リストリクト)は、宇都宮市を中心に18店のセレクトショップ「アーク」を運営するリストリクトの自社EC。早くからEC強化を図ってきたほか、親しみやすいコンテンツが、「ECサイトながら接客感があり初めてでも利用しやすい」と評価された。中でも様々なスタッフが登場するユーチューブチャンネルは、専用スタジオを設けて発信を強化しており、注目度が高かった。
■フォーカス賞=大小問わず参考・注目しているECサイトを各企業が推薦
サポート賞
「ビジュモ」(ビジュモ)、「チャネルトーク」(チャネルコーポレーション) 顧客体験向上からCVR改善につなぐ
サポート賞は、ビジュモが提供するビジュアルマーケティングプラットフォーム「ビジュモ」と、チャネルコーポレーションのオールインワン・ビジネスメッセンジャー「チャネルトーク」が受賞した。
ビジュモは前々回に次いで2回目の受賞。自社作成の画像・動画、UGCやインスタグラムのコンテンツを統合管理し、サイトコンテンツを簡単に拡充できる。「公式インスタグラム、店舗スタッフ投稿により商品のイメージをより具体的に膨らませてくれる」「鮮度が高いスナップが、回遊を高め、滞在時間を延ばす」など顧客体験の向上が、「購入へのひと押しとなりコンバージョンにもつながる」「売り上げに貢献したサービス」と評価する企業が多かった。受賞を逃した23年も着実に導入企業を増やしており、24年4月には800社を超えた。貢献サービスに比べ、「今後導入したい、注目サービス」に挙げる企業は少なかったが、まだまだ広がりそうだ。
チャネルコーポレーションが提供するチャネルトークは、接客チャットによりSNSでのやり取りも含め一元管理でき、チャットの内容は、購入履歴や顧客情報と組み合わせて分析できる。客の声をマーケティングに生かすため社内チャット機能や顧客管理システムも提供する。一人ひとりの客に寄り添う接客対応を可能にする機能が強みだ。
売り上げに貢献したサービスとして挙げた企業は、「問い合わせを一元化でき、客の悩みを解決し購入のハードルを下げることができている」という。顧客体験の向上がファンづくりやCVR(購入率)向上につながることを評価する企業が多い。
大手アパレル企業の導入例が多いが、相対的には今後導入したい注目サービスとしてあげる企業が多く、アパレル業界では今後広がりが見込まれる。
継続的に業界発展に貢献しているサービスとして、22年に殿堂入りした「スタッフスタート」(バニッシュ・スタンダード)は今回も多くの評価を集めた。アフターコロナのOMO戦略の標準ツールとして、今後もその裾野を広げていきそうだ。また、前回受賞のAIサジェストプラットフォーム「アウーAI」(アウー)、サイズレコメンドエンジン「ユニサイズ」(メイキップ)はともに、今回も多くの高い評価を得ている。
また、「ショッピファイ」(ショッピファイジャパン)や「イーシービーイング」(イーシービーイング)に注目する企業が増え、リプレースを検討する企業が少なくないようだ。
全体としては、少なくないサービスが機能を加え連携を広げ、データ活用のプラットフォームへの進化が期待が集めているようだ。データの活用はAIの重要性を高めている。活用分野は異なるが、生成AI活用も始まっている。
《アンケート協力企業》
AOKI、アーバンリサーチ、アイジーエー、アウー、アジオカ、アダストリア、石川商店、イトキン、インターファクトリー、ヴァンドームヤマダ、エース、エニーマインドジャパン、F・O・インターナショナル、エフ・ディ・シィ・プロダクツ、エンドレス、岡本、クイーポ、栗原、クロシェ、クロスプラス、グンゼ、京王百貨店、コックス、サックスバーホールディングス、三陽商会、JR西日本SC開発、ジオン商事、シップス、ジャヴァコーポレーション、ジュニアー、ジュン、ジョイックスコーポレーション、ジンズ、スタージュエリー、スタイリングライフ・ホールディングス・プラザスタイルカンパニー、すててこ、そごう・西武、ゾゾ、ダイドーフォワード、大丸松坂屋百貨店、高島屋、タビオ、ダブルエー、チャネルコーポレーション、チュチュアンナ、東急百貨店、東京ソワール、ナイガイ、ナルミヤ・インターナショナル、ハニーズホールディングス、パル、パルコ、パレモ、バロックジャパンリミテッド、阪急阪神百貨店、ビームス、ヒロタ、ファッション須賀、フィルム、フェスタリアホールディングス、福助、ブランシェス、フランドル、プリモグローバルホールディングス、プリモ・ジャパン、プリンセストラヤ、プレイ・プロダクト・スタジオ、ベイクルーズ、マーキーズ、マックハウス、マッシュスタイルラボ、マドラス、マルカワ、三井不動産、三越伊勢丹、ミルク、ムーンバット、メイキップ、山喜、ヤマトインターナショナル、ユナイテッドアローズ、ユニクロ、ライトオン、リーガルコーポレーション、ルックホールディングス、ルミネ、レイジースーザン、レスポートサックジャパン、レビコ、レリアン、ワークマン、ワールド、ワールドパーティー、ワコール、ワシントン靴店
ウェビナーを配信予定
6月27日に「ファッションECサミット-第7回ファッションECアワード記念講演-」としてウェビナーを配信予定。詳細はこちらから。