繊研新聞社による「第8回ファッションECアワード」は、OMO(オンラインとオフラインの融合)を推進しながら、高い実績を上げるサイトがエクセレント賞に選ばれた。ブランド横断型サイトが揃ったのも特徴だ。フォーカス賞は、SNSなどを活用したブランディングにたけ、Z世代にコアなファンを持つサイトが受賞。サポート賞は、コンテンツの充実や、良質な購買体験の提供に寄与し、LTV(顧客生涯価値)向上を図るサービスに票が集まった。これらの賞は、ファッション企業やITベンダー企業合計約100社からのアンケートをもとに選出した。
エクセレント賞
パルクローゼット(パル) スタッフの活躍と優れたコンテンツ力

「パルクローゼット」(パル)は昨年に続く2度目のエクセレント受賞となる。パル内の多様なブランドを統合しながら、優れたUIUXでサイトを構成している点が評価されているほか、オンライン上の「スタッフの活躍とコンテンツ力が優れている」とのコメントが多数集まった。また、社内インフルエンサースタッフのAIチャットなど、「チャレンジングな機能を搭載している」と、新しい技術を積極的に取り入れる姿勢も支持されている。サイトの売上高は前年比2ケタ増で成長しており、伸びの高さでも注目された。
ベイクルーズストア(ベイクルーズ) 実店舗との連携や利便性の高さ

「ベイクルーズストア」(ベイクルーズ)は、サイトのデザインや商品画像が「おしゃれで見やすい」と定評がある。今シーズン、イチ押し商品の特集やブログ、ユーチューブなどのコンテンツも豊富だ。スタッフのスタイリング紹介やレビュー数も多く、EC上で商品の魅力を伝える施策が充実している。実店舗で購入した際も情報を共有し、その商品を使ったスタイリングをメールとLINEで配信している。ほかにも、店頭の在庫確認や購入後の配送の速さなど、ユーザーにとって利便性が高い。ブランド横断の提案も多く、自社ECで高い売り上げを維持している点も評価された。
アンドエスティ(アンドエスティ) 名称変えオープン化、総合力の高さも

24年に「ドットエスティ」から名称変更した「アンドエスティ」(アンドエスティ)は、前身から数えて5度目の受賞だ。アダストリアが新たに立ち上げた子会社に運営を移管し、オープンモール化を加速している。社外の出店企業に対する従業員によるコーディネート投稿機能「スタッフボード」の開放などの施策が注目されている。サイト自体の評価ポイントは、シンプルで視認性の高いUI、同名の実店舗との連動を軸としたOMO施策、AIチャットによるカスタマーサービスの導入など、ECサイトとしての総合力の高さを指摘する声が多かった。
■エクセレント賞=先進性があり、総合的に優秀と思うECサイトを各企業が推薦
フォーカス賞
メゾンスペシャル(プレイ・プロダクト・スタジオ) 服の魅力、着こなし方を伝える

「メゾンスペシャル」(プレイ・プロダクト・スタジオ)は、デザイン性の高い服の魅力を伝えるビジュアルが特徴だ。着こなしの難易度が高い商品もあるが、1アイテムに対して何通りものスタイリング画像を載せるなど、EC上での見せ方を工夫している。プレスやインフルエンサーを招待する年4回の展示会の時期に合わせてECでも先行の予約販売を行うようにしており、SNS経由の購入も多い。サイトのシステムもシンプルながら回遊性が高く、「導入ツールを参考にしている」との声も挙がった。
YZストア(ユトリ) ストリート感満載のECストア
ユトリが運営する「YZストア」は、Z世代などをターゲットにした、ストリート感満載の独自性あるブランドセレクトで感度の高い若年層に高い支持を得ている。SNSと連動した販売戦略や、ブランドストーリーを重視した商品展開は、単なるモノ売りではなく共感を生む体験型ECとして注目されている。ファッション感度の高いスタッフのキュレーション力も強みで、時代の空気を反映した柔軟な編集力が光る。サイトもさることながら、企業そのものへの関心も高くフォーカス賞を受賞した。
■フォーカス賞=大小問わず参考・注目しているECサイトを各企業が推薦
サポート賞
ビジュモ(ビジュモ)、リカスタマー(リカスタマー) 体験価値向上のサービスに注目
導入して効果があった、今後導入したい支援サービスを選ぶ「サポート賞」はビジュモが提供するビジュアルマーケティングプラットフォーム「ビジュモ」とリカスタマーの購入体験プラットフォーム「リカスタマー」が受賞した。新規客の獲得が難しくなるなかで、良質な顧客体験を提供しLTVを高めるツールやサービスに関心が集まった。
ビジュモの受賞は22年、24年、今回と3回目。ショップスタッフや消費者がSNSに投稿した画像や動画を集約し、ECサイトのコンテンツに生かせる。近年、スタッフ投稿を経由したEC売り上げが増えており、その貢献が評価された。昨年はスマートフォンユーザーが慣れ親しむSNSのようなUIを実現する「フィードモーダルテンプレート」を機能拡張するなど顧客体験を向上させた。事業者からはSNSとの連携で投稿を気軽に活用できる、CVR向上に貢献、機能拡張が進んだなどの評価があった。
リカスタマーは注文商品の配送追跡や購入商品の返品・交換・注文キャンセル業務を自動化する「購入後の顧客体験」を向上する。クーポン発行やレコメンドなど購入前の施策が多いなか、新しい体験価値の提供として注目される。返品がスムーズにできる体験で信頼度が高まり、2回目、3回目の購入に至りやすいという調査結果もあり、大手アパレルやスポーツブランド、成長著しいECサイトでの導入が進む。返品対応の作業効率化・コスト削減だけでなく、売り上げやLTV向上につながることも認知が進む。「国内にあまりない新しいソリューション」として期待値も高い。
購買体験の価値を高めるサービスに票が集まる傾向があった。過去の受賞サービスでもある「スタッフスタート」や「カルテ」などのほか、「スプロケット」「ゼータ」「インサイトX」などAI活用も含めた顧客にあったレコメンドや情報提供などウェブ接客、CRMを行うツールに票が入った。その他、サイトの表示速度を維持・向上する「リプロブースター」や、質を落とさずに画像・動画を軽量化する「スマートJPEG」などユーザーの使い勝手を向上するツール、不正購入検知の「オープラックス」、越境ECサポートの「ワールドショッピングビズ」など事業課題に向けたソリューションへの得票も目立った。
■アンケート協力企業
アイジーエー、アウー、アジオカ、アッシュ・ペー・フランス、アバハウスインターナショナル、アーバンリサーチ、アンドエスティ、石川商店、イトキン、ヴァンドームヤマダ、ウッディーハウス、エーアンドエス、AMS、エース、MSPC、SCSK、F・O・インターナショナル、エフ・ディ・シィ・プロダクツ、オーロラ、岡本、川辺、キング、クイーポ、栗原、クロシェ、クロスプラス、グンゼ、京王百貨店、ゴールドウイン、ゴールドラットジャパン、コックス、コンコルディア、コンプレックス・ビズ・インターナショナル、サザビーリーグアウルスケープ、三陽商会、シップス、シャルズ、JAMトレーディング、JR西日本SC開発、ジュン、ジンズ、スタージュエリー、スタイリングライフHD・プラザスタイルカンパニー、スタジオアタオ、すててこ、スプロケット、ZETA、ゼビオコミュニケーションネットワークス、そごう・西武、大丸松坂屋百貨店、高島屋、タビオ、ダブルエー、土屋鞄製造所、東急百貨店、東京ソワール、東京デリカ、ナイガイ、ナルミヤ・インターナショナル、ハニーズHD、パル、パルコ、パレモ、バロックジャパンリミテッド、阪急阪神百貨店、ビームス、ビギHD、ヒロタ、ファーストリテイリング、ファイブフォックス、ファッション須賀、フィルム、フェスタリアHD、福助、ブランシェス、ブルーミング中西、ベイクルーズ、マーキーズ、マッシュHD、マドラス、三井不動産、ミルク、ムーンバット、メイキップ、メグリ、山喜、ユナイテッドアローズ、リゲッタ、リトルリーグ、ルックHD、ルミネ、レスポートサックジャパン、レリアン、ワークマン、ワールドパーティー、ワコールHD(HD=ホールディングス)
記念講演をリアル開催
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