【パリ=松井孝予通信員】「エルメス」の創業家がフランスで一番の資産家に――仏経済誌『シャランジュ』による25年版「フランス資産家番付」で、エルメス創業家が初の首位に立ち、17年以降トップを維持してきたLVMHグループのアルノー家を逆転した。
売上高で見れば、LVMHの約850億ユーロに対し、エルメスはその6分の1に満たない152億ユーロ。だが24年決算では、エルメスの純利益が前期比7%増に対し、LVMHは17%の減益だった。株式市場の評価はより明確で、株価はエルメスが2.5%上昇し、LVMHが25%下落した。同誌はエルメス家の資産を1634億ユーロと試算し、アルノー家の1167億ユーロを大きく上回ると算定した。
エルメスは創業家が株式の約3分の2を保有し、単一ブランドによる高収益体制を貫く。市場との関係は慎重かつ長期的だ。対してLVMHは、M&A(企業の合併・買収)によるコングロマリット。規模だけでなく、企業構造と市場からの信認の差が資産価値を分けた。
一方、ランキング全体では「シャネル」のヴェルテメール兄弟(3位)、「ロレアル」のベタンクール家(4位)、そしてケリングのピノー家(9位)とラグジュアリー関連がトップ10の半数を占めた。