ヒットの裏側、ドゥーズィエムクラス

2016/09/12 05:25 更新


ラクラス「スタイリングありき」着回し力の高さに支持


 ベイクルーズグループのラクラスが運営する、「ドゥーズィエムクラス」に勢いがある。13年春のブランド刷新以降好調が続いており、今春夏の自社ECを含む既存店売り上げは、3~5月で前年同期比12・8%増となった。15~16年秋冬も前期比約12%増と伸ばしていた。好調を受け、30代以上の女性市場ではフォロワーブランドも増えている。服が売れない時代に、どうしてドゥーズィエムは売れるのか。秘訣(ひけつ)は、「スタイリングありき」のブランドの組み立てにある。


コスパ意識に合致

 いまレディス市場では、〝コストパフォーマンス(コスパ)の高さ〟が売れるブランドのキーワードになっている。コスパには、価格に対する品質の高さだけでなく、着回し力の高さや着こなしの幅の広さも含まれる。高コスパブランドの代表は「ミラオーウェン」「ユナイテッドトウキョウ」など。ドゥーズィエムはそれらに比べると高額で、一見コスパとは無縁のようにも感じる。しかし、オン・オフで着回すことができる、長く着られるといった点で、女性のコスパ意識にがっちりはまっている。だから高額でも売れる。

 ドゥーズィエムが13年春のブランド刷新の際に「最も重視した」(佐藤恵コンセプター)点は、「スタイリングありき」の考え方だった。これぞまさに、着回しや着こなしの幅を広げようとするもの。オリジナル商品の採用品番や生産数量を決める検討会のやり方を変えることで、着回し力の高いブランドへと進化した。

 以前の検討会は、私物の服や靴と合わせて、1点ずつ新作を検討していたという。それを、新作で全身を何通りにもコーディネートし、そのバランスの中で、丈やシルエットを「しつこく」調整する場に変えた。同時に、「このボトムはこのトップと合う、こちらとも合う、シーズンが進めばこうも着こなせる」というように、着回しを徹底的に考えるようになった。

 「服だけでなく、靴まで完璧でなければダメ」と、様々な靴を合わせて理想的なシルエットを追求する。特に、「ハイヒールだけでなく、フラットシューズでもきれいに見えるか」は口を酸っぱくして指摘し、両方に対応できるようにボトム丈を調整する。そうすれば、靴を選ばずコーディネートが広がる。また、シーズン中盤以降は靴に欠品が出るが、このように丈を調整しておけば「店に残っている靴がボトムと合わないから売れない」という事態も避けられる。


検討会やれば外さない

 佐藤コンセプターを含め、同ブランドの本部スタッフは基本的に全員が販売経験者。そのため、客が求めるものが頭にたたき込まれている。ただし、デザイナーは最初から企画職として採用されており、店頭経験が無い。「うちのデザイナーは皆技術があって、センスもいい。彼女たちが作るものを信頼している。私がやったのは、そこに最後のつめとして、(客が求める)コーディネート力やバランス感といった考え方を注入しただけ」と佐藤コンセプター。

 検討会にはみっちり1週間を充てる。「とても時間がかかるが、これをちゃんとやれば絶対に外さない」と言い切る。検討会で何通りにも着回せると判断したアイテムは、シーズンを通して売る定番と位置付けて、生産数量を上乗せする。

 

16年春夏は、「ベーシックだがどこかフェミニンに見える」シャツがヒット

 

 16年春夏にヒットした、シャツやストレートラインのスカート、シルクサテンのウエストドローストリングテーパードパンツは、まさに定番と位置付けたアイテムだった。バランス感や素材を徹底追求したことで、「ベーシックだが、フェミニンに見える」と客に支持された。シャツでは、1万9000円の商品よりも2万3000円のものがヒット。

  当初は1万9000円を強化品番にしようとも考えたが、オン・オフの両シーンで着回せるからと、2万3000円の生産枚数を増やしたところ、ヒットにつながった。「お客様は、安いからうちで買うわけではない。高くても、着回しがきいて毎日でも着たいと思うような服を求めている」という分析に、好調の理由が凝縮されている。


(繊研 2016/08/01 日付 19522 号 1 面)

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