ベテラン記者によるジーンズの深いぃ話-8

2015/05/23 08:27 更新


 ジーンズを担当して20年の繊研新聞記者が、方々で仕入れてきたジーンズ&デニムのマニアック過ぎる話を、出し惜しみせず書き連ねます。今回は、ジーンズを語るならまずこの言葉から知っておきたい「セルビッジ」、いわゆる「赤耳」について―――。

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8、赤耳はこだわりのしるし~セルビッジデニムの話~

 ジーンズのセールストークに「セルビッジ(赤耳付き)デニムを使っています」というのがある。セルビッジデニムは、シャトル式力織機で織る。シャトル織機というのは、かなり昔に作られた旧式の織機で、最近の織機と比べて生産性が低く、現在ではあまり残っていない。それだけにシャトル織機で織られたデニムには希少価値がある。

 シャトル織機は通常の織機よりも幅が狭く、29インチ(約73センチ)までしか織れない。通常のデニムと比べると半分程度の幅で、織物の両端の耳と呼ばれる部分に白い糸と赤い糸を縦に通す。このデニムを使ってジーンズにすると、両足の側面に生地の耳がきて、裾を折り返すと赤と白の部分(赤耳)がみえる。

布の端の赤い部分が”赤耳”と呼ばれる
布の端の赤い部分が”赤耳”と呼ばれる

 シャトル織機でセルビッジデニムを生産する工場を取材したことがある。そこは1960年ごろに製造された織機を使っていた。ビンテージジーンズのデニムは14オンス、15オンスと厚い生地が多いため、織機もそのままでは使えず、何箇所か改造したという。

 よこ糸を通すシャトルは木製なのでだんだんと磨り減っていく。シャトルを受ける部分など各部に革を使っているため、温度や湿度の変化で伸び縮みする。そういう毎日のチェック項目が十カ所くらいある上、織機1台ずつにクセがあるから管理が大変だと話していた。「最新の織機はボタン一つで動いてくれるが、シャトル織機は機械というより道具。自分で動く機械というにはあまりに手がかかりすぎる」と語る工場の人の言葉が印象に残っている。

セルビッチ2

セルビッチ3

【写真上・下=シャトル織機】

 シャトル織機の回転速度は、革新織機のレピア式と比べると約3分の1のスピード。1時間で5メートルしか織れず、ジーンズにすると2本分だ。しかも織り幅が通常の織機の半分なので生産性はレピア織機と比較すると6分の1になってしまう。

 しかし、革新織機は高速回転で生産するため、準備工程で糸に付ける糊の量が多く、製織時にかける糸の張力が強い。そのため織り上げた生地の表面は均一できれいだが、平板な感じになってしまう。逆にシャトル織機だと、糊の量が少なく糸の張力も弱いため糸の屈曲が深くなり、凹凸感のある織物になる。これがセルビッジデニムならではの味わいだ。

 ただ、あるジーンズメーカーの生産担当者を取材したとき、彼は「昔の機械を使っていいことなど一つもない。ゆっくり動くのがいいというのなら、今の機械をゆっくり動かせばいい」と語ったことがある。そう言われればそのなのかなと思ってしまうが、これについては専門家に確認しないとわからない。

 赤耳付きのジーンズがブームとなり、セルビッジデニムが足りなくなったときに、幅の広い織機で織ったデニムの真ん中に白い糸と赤い糸を入れ、織り上げた後に二つに裁断して縫製し、セルビッジデニム使いのようにみせたジーンズが登場した。業界ではこうした商品を”ふさ耳”というが、口の悪い人は”うそ耳”と呼んだ。

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