ニューヨークに「獺祭」の酒蔵がオープン

2023/09/24 01:00 更新


旭酒造の桜井社長(右)と桜井会長

 【ニューヨーク=杉本佳子通信員】旭酒造が、ニューヨーク(NY)のマンハッタンから北に2時間以上行ったハイドパークに、新しい米国ブランド「Dassai Blue」(獺祭ブルー)を製造する酒蔵をオープンした。広さは約5100平方メートルで、建設費用は80億円。

 記者会見した同社桜井一宏社長によると、16年12月にハイドパークにある料理専門大学、カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(CIA)からアプローチされ、翌年1月に現地を視察して酒蔵建設を決めた。CIAでは人気が高まっている日本酒について学ばせたい意向があり、獺祭の名前を聞いたことがある教授がいたことから旭酒造に打診があったという。

 一方旭酒造は、米国におけるアルコール消費の市場規模の中で日本酒が占める割合が0.2%であることに着目。桜井社長は「日本食のお供という(日本酒の)壁を越えるためには、米国に酒蔵を出す必要がある。日本酒は米国人にとってまだまだよそ者で、もっと現地に踏み込んでいかないと。日本の物作りや伝統を見つめ直して、世界に伝えていくことに貢献できれば」と語った。

 アーカンソー州で栽培した山田錦とNYの水で作った獺祭ブルーは、やや甘めですっきりした少しフルーティーな味わいだ。アーカンソー州では炭素排出量を削減し、持続可能なサプライチェーンを確立する取り組みを行っているという。NY州でも酒粕を蒸留して焼酎にする生産者、精米で発生する米粉のバイヤーを探すとともに、水の浄化に多くの投資をしている。CIAとはカリキュラム、ワークショップ、特別イベントなどで提携し、国外から同大学に学びに来た人々が自分の国に帰って行く時に日本酒のイメージを変えていけることも期待している。

 獺祭ブルーの最初の商品、「獺祭ブルー タイプ50」(720ミリリットル)は9月25日からNYの小売店及びレストランで流通が始まり、小売価格は34ドル99セント。獺祭ブルーに最も合う料理を聞かれ、桜井博志会長は「ステーキ」、桜井社長は「生ガキ」と答えた。10月下旬以降は少人数のツアーと試飲の予約をウェブサイト(www.dassai.com)で受け付ける。



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事