入門・クラウドファンディング⑥ 大手企業にも有用

2018/01/02 17:00 更新


 前回は、購入型クラウドファンディングの「マーケティング」としての活用法やメリットについて書きました。今回は、日本を代表する大企業であるシャープが、日本経済新聞が運営する購入型クラウドファンディングサイト「未来ショッピング」を活用し、自社製品のテストマーケティングやPR/プロモーションを行った事例についてご紹介します。

 購入型はマーケティング手法としての活用が主流で、資金調達の手法という認識は誤解である点については、これまで説明してきた通りですが、マーケティング手法としての活用に関しては、豊富な資金力を持つ大企業であろうと、創業間もないベンチャー企業であろうと、変わらずニーズがあり、最近では、大手企業における活用も増加しています。

 17年5月、シャープは新規事業であるモバイル型ロボット電話「ロボホン」の発売1周年を記念して、普段販売していない特別モデルや限定アイテムの開発を実現するために、購入型クラウドファンディングを実施しました。前回の事例とは異なり、全く新しい製品を開発するのではなく、既にある製品にアレンジを加えたり、数量を限定して他ブランドとコラボレーションした製品を開発するケースとして活用されました。

 具体的には有名ブランドや伝統工芸の技術とコラボレーションしたモデルや、通常とは異なる特別なアプリケーションを搭載したモデルを数量限定で開発したり、周辺機器やパーツでこれまでと異なるバリエーションを追加するなど、通常の生産/販売フローでは柔軟に対応しにくく、在庫を抱えるリスクが高い取り組みを、事前にユーザーの反応や注文状況を見ながら検討や対応をスピーディーに行うことで、リスクを抑えた形で実現しました。

 また、ロボホンをより有効に活用するためのワークショップなどのサービス/イベントなど、別の付加価値とセットにするなど、これまでと異なる売り方や提供方法についても、様々なアイデアにチャレンジしました。

 本プロジェクトはロボホンの公式サイトでの事前告知だけでなく、「未来ショッピング」と連動する日本経済新聞の媒体を活用したクロスメディアでのマーケティングも奏功し、ツイッターを中心としたSNS(交流サイト)やメディアでも紹介・拡散されるなど、非常に大きな反響がありました。その結果、既にロボホンを購入していたユーザーだけでなく、これまでロボホンを認知していなかった潜在層や新規ユーザーにも効果的にリーチすることができ、当初の目標を大きく上回る成功を収めたのです。

 次回は、これまでにご紹介した成功事例なども踏まえ、購入型クラウドファンディングを成功させるための考え方や必要な準備、取り組みに関するポイントをご紹介します。

(北嶋貴朗・Relic代表取締役CEO)

きたじま・たかあき 大企業から中小・ベンチャー企業まで延べ100社以上の新規事業開発やオープンイノベーション、マーケティング/営業を支援。自社で運営する複数のクラウドファンディングサイトや、マーケティングオートメーション/CRM/SFAサービスも展開


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