【第19回アジア太平洋小売業者大会から⑦】東急ストア専務執行役員営業本部長 大堀左千夫氏 ネット活用、農家と消費者をつなぐ

2019/10/20 06:30 更新


《新しい小売り、消費、潮流~第19回アジア太平洋小売業者大会から⑦》東急ストア専務執行役員営業本部長 大堀左千夫氏 ネット活用 農家と消費者をつなぐ

 リアルの場としての価値を高めるため、ネットを活用して生産者と消費者をつなぐ取り組みがスーパーマーケット(SM)業界で広がっている。東急ストアの大堀左千夫専務執行役員営業本部長は農家と消費者の双方向コミュニケーションツールについて、講演した。

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■リアルの良さを

 SMは業界内だけでなく、コンビニエンスストアやドラッグストア、ECなどとの競争も激しくなっている。いかに他業種と差別化し、「リアルの良さ」を出すかが大きな課題だ。こうした中で、「手紙のついた野菜」「手紙のついた果物」で、生産者とお客様をつなぐ取り組みを06年にリリースし、07年から本格化した。

 日本の野菜農家は地方の過疎化と少子高齢化などの影響で、年々減少している。野菜の消費量も減少傾向だが、安心・安全な国産品を求めるお客様は多い。こうした環境下で、特徴がある高付加価値品を提供し、減少する農家を活性化する目的で、「手紙のついた」を始めた。商品についているQRコードをスマートフォンで読み取ると、生産者の思いや栽培方法の特徴、安全への取り組みなどを記した手紙が出てくる。専用のウェブサイトとも連携している。他のSMでも同様の取り組みはあるが、その大半は生産者からのメッセージの発信機能のみ。当社では14年からお客様の声を収集し、生産者が返信できる機能を加えた。18年度の手紙のついた野菜は150品目を超え、売上高は21億円で、東急ストアの野菜売り上げ全体の約10%に達した。近年は有機農産物が増えている。今期から、サイトをリニューアルし、スマートフォンの進化に合わせてデザインを刷新した。

■お客様起点サイトへ

 返信機能を加えたことで、お客様と生産者の双方向のコミュニケーションが可能となった。お客様の産地と商品への興味もより高まった。サイトは2万5000以上閲覧され、様々なお客様から共感を得ている。生産者はお客様の反応が直接わかる。そのニーズを反映させて、新商品開発につなげる生産者も多い。生産意欲の向上にもつながっている。

 サイトではお客様が知りたいコンテンツもまとめて掲載している。生産から出荷までの情報などのほか、対象商品を使ったレシピの提案も掲載しており、好評だ。

 海外の農家とも積極的に取り組んでいる。フィリピンの当社指定農園で、当社の社員も入り込んで開発した「もっちりバナナ」が代表例。年間で50億円以上売り上げる人気商品だ。

 今後は「生産者起点」から「お客様起点」にサイトをシフトする。産地との連携をさらに強化し、今の日本が抱える農家の後継者不足にも貢献していきたい。

返信機能を加えたことで双方向のコミュニケーションが可能となったと大堀東急ストア専務執行役員営業本部長

(繊研新聞本紙19年10月2日付)



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